『虎に翼』“大吉派”と“華丸派”どちらがより楽しめる? 史実からの脚色に込められた意図
NHK総合で放送されている朝の生活情報番組『あさイチ』では、番組開始時に、MC陣が直前まで放送されていた連続テレビ小説(朝ドラ)の感想を述べる「朝ドラ受け」を行うことがある。そこで以前、MCの1人である博多華丸が「ドラマの最中に、その先のストーリーをちょろっと言うのやめてください」と相方の大吉にクレームを入れていたことがあった。それに対し大吉は、積極的に“ネタバレ”を探しているわけではなく、「史実はこうだったらしいけどね、っていうネットニュースは目を通すようにしてるんですよ」と反論していた。
現在放送中の朝ドラ『虎に翼』のヒロイン・寅子(伊藤沙莉)のモデルは、日本における初の女性弁護士であり、初の女性判事であり、初の女性裁判所長を務めた三淵嘉子。だから三淵が歩んできた人生(=史実)を知れば、自ずと寅子が歩んでいく人生もわかってくる。だが三淵のエピソードがドラマで同じように描かれるとは限らない。
たとえば、『虎に翼』では寅子の父・直言(岡部たかし)が巻き込まれた「共亜事件」は、実際にあった「帝人事件」がもとになっていると思われるが、三淵の父はこの事件とは無関係。ただし、三淵の父は事件の関係先とされ、起訴された人も出た台湾銀行に勤めていた。さらに、三淵は2度結婚しているが前夫との間には、後に寄生虫学者となった息子がいる。寅子と優三(仲野太賀)との間に生まれたのは娘の優未(竹澤咲子)なので、その点も異なる。このように、当たり前ではあるが、ドラマでは史実通りというわけではない。
では、史実とは違う大きな脚色には、どんな意図があるのだろうか。そのひとつは、史実をよりドラマチックにするためだろう。
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