『光る君へ』吉高由里子の微笑みに込められた喜びと悲しみ まひろをめぐる“2人の男”の愛

『光る君へ』まひろをめぐる“2人の男”の愛

 まひろの懐妊に対するやりとりで、まひろと宣孝の絆はより深まる。劇中、はっきりと明言されることはなくとも、宣孝の足が遠のいていた時期に出来た子、ととはつまりそういうことだ。喜びではなく、罪悪感に苛まれるようなまひろの表情は心苦しい。まひろの懐妊を大いに喜んだ宣孝に、まひろは「よく気の回るこの人が、気づいていないはずはない」と心を痛める。まひろは、あえて黙っている宣孝に正直に伝えることも偽ることも罪深いと思い悩むのだが、その姿には十二分に宣孝への愛がうかがえる。だが、宣孝への思いがより強固なものになったのは、まひろの全てを受け入れる宣孝の心の深さに触れた時だ。宣孝の思いがけない言葉にまひろは驚き、戸惑うが、宣孝の言葉の真意に胸を打たれ、涙ぐむ。宣孝の優しい微笑みを受けて、まひろもふっと微笑む様に胸が熱くなった。

 第27回では、まひろへの想いが強く感じられる道長、宣孝の表情も強く印象に残っている。道長の場合は、石山寺で一度別れた後、戻ってきた時の面持ちが心に響く。それまでの会話で道長の口調が、今や左大臣となった道長の冷静な口ぶりとあの頃の道長、三郎らしい口ぶりが行ったり来たりしているように感じられた。そんな柄本の台詞の言い回しを通じて、立場と本当の思いの間で葛藤しているのはまひろだけではないと伝わってくる。だからこそ、戻ってきた時の道長の顔つきは、まひろを想う正直な自分の気持ちだけに満ちていた。愛おしそうにまひろを抱き寄せる優しい手元もまた、まひろへの強い気持ちを表しており、肌を重ねた後にまひろに触れる手などはとても美しく切ないものだ。

 宣孝の場合は、第25回での「好きだからだ、お前のことが」や「どこへ行ってもお前のことを想うておった」など、はっきりとした好意をさらりと言ってのけるところが彼らしい愛情表現だ。まひろが懐妊をきっかけに別れを切り出した時、宣孝は「そなたの産む子は、誰の子でもわしの子だ」ときっぱり言ってのけた。まひろの目をまっすぐに見て、断言する姿に、結婚前も結婚後も、宣孝はまひろの全てを受け入れ愛しているのだということがありありと感じられる。

「わしのお前への思いは、そのようなことで揺るぎはせぬ」
「何が起きようとも、お前を失うよりは良い」

 飾らない言葉で、揺るぎない愛を伝える宣孝に、まひろ同様、心動かされた視聴者は少なくないはずだ。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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