『【推しの子】』黒川あかねは第2期の“主人公”だ アビ子の全否定で超シリアスな展開に
テレビアニメ『【推しの子】』第13話で注目が集まったのは、『東京ブレイド』の原作者・鮫島アビ子と脚本家・GOAのやり取りだ。第1話のラストで、舞台『東京ブレイド』の稽古を見た漫画原作者のアビ子が「脚本を全部やり直してほしい」と厳しく指摘するシーンの続きに当たる今回のエピソードを観て、なんともやり場のない重い気持ちになった視聴者も多かったのではないか。
人付き合いが苦手で、自身の作品に強いこだわりを持つ『東京ブレイド』の原作者・アビ子。彼女の妥協を許さない姿勢には、創作のプロフェッショナルとしての矜持が感じられる。しかしその物言いは時に厳しさを超え、GOAにとっては自身の解釈や創意工夫を全否定されたかのような苦痛を感じさせたかもしれない。ちなみに、シリアスな展開の中で、アビ子の「ダブル歯磨き」シーンがアニメ化されたことは、ファンにとって嬉しい要素だったに違いない。
『ダブル歯磨きです。歯ブラシ二本使えば2倍の速度で磨けるじゃないですか」#推しの子 pic.twitter.com/VkfmVfEdO9
— 『【推しの子】』TVアニメ公式 (@anime_oshinoko) July 10, 2024
アビ子は稽古開始前から、何度も脚本に対して修正指示を出していた。それにもかかわらず、齟齬のある脚本が完成した背景には複雑な理由があった。第13話のタイトル「伝言ゲーム」が示唆するように、実写化プロジェクトでは意見の伝達が文字通り「伝言ゲーム」と化してしまうのだ。舞台製作には多数の関係者が携わる。アビ子の脚本に関する意見は、編集者、プロデューサー、マネージャー、脚本家など、様々な人物を経由する過程で、本来の意図から徐々に乖離していってしまう。
原作の意図を正確に伝える難しさと、それを新たな形に昇華させる過程での齟齬。メディアミックス化に伴う本質的な課題とは、多数の関係者間のコミュニケーションにおける構造的な問題なのだ。
そんな舞台化プロジェクトの裏側を描く第2期で、実質的な主人公と言えるほどの存在感を放っている人物が黒川あかねだ。
ビジュアル面でも、ボブカットからロングヘアへのイメージチェンジを果たしたあかね。もちろん、アクアの好きなアイに見た目を寄せている。古典的な演劇しか知らないアクアにステージアラウンドを紹介するため、「せっかく時間できたんだから、ちょっとデートしよ?」と誘うシーンは、視聴者の心を鷲掴みにしたのではないか。