『虎に翼』第9~14週の“週タイトル”の意味を解説 物語とシンクロする秀逸な言葉の数々
第12週「家に女房なきは火のない炉のごとし?」
「家に女房なきは火のない炉のごとし」とは、「家に主婦がいないのは、炉の中に火がないのと同じで、大事なものが欠けていて寂しいということ」(※4)
最高裁判所家庭局事務官、東京家庭裁判所判事補となった寅子は、戦災孤児の問題に向き合う。上野でスリを繰り返す少年・道男(和田庵)に出会い、よね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴)と再会する。引き取り手が見つからない道男を家に連れて帰る寅子。花江(森田望智)や花江の息子たちが難色を示すなか、はる(石田ゆり子)は困った時は助け合いだと道男を迎え入れる。
その後、道男が花江にとった行動が誤解されてしまい、道男は猪爪家を飛び出す。そのタイミングではるは心臓発作により倒れてしまう。寅子は、はるのために戻ってきてくれと道男を説得する。
作品を優しく照らす火として存在していたはるの死が描かれた第12週。道男も大きな愛で包み込もうとしたはるの愛情深さや、はるのために何ができるのかを考える寅子や花江が印象的だった。はるがどれだけこの作品にとって重要な存在であるかを示した週タイトルだろう。
第13週「女房は掃きだめから拾え?」
「女房は掃きだめから拾え」とは、「妻を迎えるなら、自分より格下の家からもらうのがよいということ。身分の高い家から妻をもらうと、親戚付き合いに苦労したり夫の権威が下がったりする恐れがあるとの意から」(※5)
特例判事補となった寅子。多岐川と共に、家庭裁判所の存在を全国に知ってもらうため、「愛のコンサート」の開催に向けて準備を進めていく。そんな中、遺産相続の案件で家庭裁判所を訪れたのは、女子部の頃からの友人である梅子(平岩紙)だった。梅子の夫がなくなり、3人の息子たち、夫の妾・すみれ(武田梨奈)、梅子の間で財産分与について話し合うも難航。家庭裁判所の調停に委ねられることに。
調停に向けた家族会議を進めるなか、三男の光三郎(本田響矢)と妾のすみれが恋仲であることが発覚。梅子は高笑いしたあと、自身の権利や役割をすべて捨てると宣言し、大庭家を去る。
この作品の地獄をすべて詰め込んだかのような大庭家のすったもんだが描かれた第13週。大庭家にとって「掃きだめから拾ってきた女房」という認識であろう梅子が、大庭家を捨てる姿には、得も言われぬ爽快感があった。
第14週「女房百日 馬二十日?」
「女房百日 馬二十日」とは、「どんなものも、はじめのうちは珍しがられるが、すぐに飽きられてしまうというたとえ。妻は百日、馬は二十日もすれば飽きてしまうとの意から」(※6)
「愛のコンサート」を経て一躍有名人となった寅子。星朋彦(平田満)の本の改稿作業の手伝いや、夫婦共に親権を手放したがっている夫婦の調停などさまざまな仕事に追われていく。どうしても家庭を花江に任せきりにしてしまい、小学生になった優未(竹澤咲子)とのコミュニケーションを疎かにしてしまう。
ひょんなことからもてはやされ、さまざまな方面から頼られてしまう寅子を表現した週タイトル。第69話では、女性が働くことについて、さまざまな場面で意見の食い違いがあった穂高に対し、寅子は真っ向から意見を述べる。法曹界で働く女性が珍しくなく、もてはやされない未来へと希望を込めた週になりそうだ。
参照
※1. https://kotowaza.jitenon.jp/kotowaza/2631.php
※2. https://kotowaza.jitenon.jp/kotowaza/1837.php
※3. https://kotowaza.jitenon.jp/kotowaza/7429.php
※4. https://kotowaza.jitenon.jp/kotowaza/2042.php
※5. https://kotowaza.jitenon.jp/kotowaza/1987.php
※6. https://kotowaza.jitenon.jp/kotowaza/4009.php
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK