ウィル・スミス完全復活か 『バッドボーイズ RIDE OR DIE』北米1位&4週ぶり好記録
6月7日~9日の北米映画週末ランキングは、ウィル・スミス&マーティン・ローレンス主演の人気シリーズ最新作『バッドボーイズ RIDE OR DIE』がNo.1に輝いた。3日間の興行収入は5600万ドルという予想以上のスタートダッシュ。苦戦にあえぐ初夏興行としては、『猿の惑星/キングダム』から4週ぶりの好成績となった。
本作はジェリー・ブラッカイマー製作によるバディアクション映画の金字塔、『バッドボーイズ』シリーズの4作目。スミス演じるマイク、ローレンス演じるマーカスの“バッドボーイズ”が、亡き上司の汚職疑惑をめぐり命がけの捜査に打って出る。監督は前作『バッドボーイズ フォー・ライフ』(2020年)のアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラーが務めた。
スミスにとって、本作はアカデミー賞の授賞式でクリス・ロックを殴打した事件から2年を経たスクリーン復帰作(2022年『自由への道』はApple TV+オリジナル作品だった)。事件のために今後のキャリアを危ぶむ声もあったが、本作は主演映画として史上18本目のオープニングNo.1を獲得し、不動の人気を証明した形だ。
もっとも、『バッドボーイズ RIDE OR DIE』の興行的ポテンシャルは未知数だった。第1作から約30年を経たアクションコメディ映画シリーズが、3部作どころか4作目も製作されること自体が非常に稀で、観客の興味を今でも惹くことができるのか、その求心力には疑問がなくはなかったのである。
2020年1月に公開された前作『バッドボーイズ フォー・ライフ』は、第2作『バッドボーイズ2バッド』(2005年)から15年ぶりの新作とあって、北米オープニング興収6250万ドルを記録。コロナ禍で劇場が閉鎖されるまでに、世界興収4億2650万ドルを稼ぎ出す大ヒットとなった。
今回は前作の初動興収には届いておらず、業界全体の元気が衰えていることを鑑みても、累計興収もそこまでの伸びは期待できないのが実情だ。とはいえ、もともと4800~5000万ドル程度とみられていた事前予測を軽やかに上回ったこと、またR指定(※北米)作品としては『オッペンハイマー』(2023年)以来の数字となったことは大いに喜ぶべきだろう。
海外市場では4860万ドルを記録し、世界累計興収は1億460万ドル。製作費は1億ドルと報じられているから、劇場公開だけでコスト回収も見込める状況だ。
注目すべきは観客からの支持の高さで、Rotten Tomatoesでは批評家スコアこそ63%にとどまったが、観客スコアは97%という絶賛ぶり。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでも「A-」評価、また別の調査では84%が「鑑賞を薦める」と回答した。18歳~34歳という若年層が全体の44%を占めていることを踏まえても、口コミ効果が大いに期待できる。
日本公開は6月21日。ウィル・スミス人気の高い日本ではどのような成績となるか。
ちなみに『バッドボーイズ RIDE OR DIE』を手がけたソニー・ピクチャーズは、第2位『ねこのガーフィールド』(原題『The Garfield Movie』)の製作・配給も担当。3週目ながら地道な興行を続けており、北米興収は6861万ドルとなった。海外市場では1億2410万ドルを稼ぎ出し、世界興収は1億9271万ドルのヒット。製作費6000万ドルのアニメーション映画としては上々で、業界全体は苦しい初夏だが、ソニーは善戦を続けている。『ねこのガーフィールド』は8月16日に日本公開予定だ。
そのほか今週の初登場は、M・ナイト・シャマランの娘イシャナ・ナイト・シャマランの監督デビュー作『ザ・ウォッチャーズ』。第4位での初登場となったが、3351館の拡大公開で週末興収700万ドルという厳しいスタートで、製作・配給を務めたワーナー・ブラザースの期待には及ばなかった。
本作はダコタ・ファニング演じるアーティストが、アイルランドの森に幽閉され、何者かの監視を受けるというホラー。このジャンルでは決して珍しいことではないが、Rotten Tomatoesでは批評家29%・観客52%、CinemaScoreでは「C-」評価という賛否両論ぶりで、今後の巻き返しはかなり難しい。
ところで『バッドボーイズ RIDE OR DIE』を監督したアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラーは、ワーナーのもとで手がけたDC映画『Batgirl(原題)』が、コストの理由で完成前にお蔵入りにされるという憂き目に遭っている。今週末の結果は、2人からワーナーへの“逆襲”とも言えるものだ。