『帰ってきた あぶない刑事』はタカとユージの“愛の物語” 舘ひろしと柴田恭兵の若々しさ

 伝説の男たち、タカとユージがハマの街に帰ってきた――。『あぶない刑事』シリーズの前作から8年ぶりとなる最新作『帰ってきた あぶない刑事』の上映が始まった。

 永遠かつ最強のバディ、舘ひろし演じる“タカ”こと鷹山刑事と、柴田恭兵演じる“ユージ”こと大下刑事もすでに70代。刑事の職を辞してニュージーランドで探偵業を営んでいたが、いろいろあって横浜に帰還、再びタフなトラブルに巻き込まれていく。

 それにしても最初のテレビシリーズから実に38年、同一俳優がこれほどまで長期にわたって主演し続けた作品は稀有である。『男はつらいよ』でも最初のテレビシリーズから最終作まで27年なのだから、『あぶない刑事』がいかに破格なシリーズかよくわかる。

70代に見えない舘ひろしと柴田恭兵

 『帰ってきた あぶない刑事』を観れば、誰しもが舘ひろしと柴田恭兵の若々しさに驚くだろう。舘ひろしは現在74歳、柴田恭兵72歳。さすがにクローズアップのショットは年輪を感じさせるが、細身のスーツを着こなしたシルエットの美しさは、とても70代には見えない。というか、38年前からまったく変わっていないのがすさまじい。

 アクションも健在だ。柴田恭兵は横浜の街を駆け抜けるし、舘ひろしは得意のバイクアクションを披露する。襲いかかってくる男たちとも、殴ったり蹴ったりのアクションも見せてくれる。脚があんなに上がる70代がいるのかと驚きしかない。どう考えても20歳ぐらいバグってる。

 ダンディー鷹山とセクシー大下がおじいちゃんになっていたらサマにならない。『あぶない刑事』の新作が見られるのは、ひとえにふたりの「奇跡の70代」ぶりに支えられている。彼らの姿を観れば、同世代はもちろん、年下のファンだって背筋が伸びて、足取りが軽くなるんじゃないだろうか。

“娘”の登場と38年目の「告白」

 今回のストーリーの鍵を握るのが、横浜で探偵事務所を開いたタカとユージの前に現れた女性、永峰彩夏(土屋太鳳)だ。彩夏は2人に姿を消した母親の夏子を探すよう依頼する。夏子はかつてタカとユージそれぞれと因縁があったため、彩夏はどちらかの実の娘ではないかという疑惑が発生する。

 タカとユージが横浜の探偵事務所で同居しているように見えるのも驚きだったが(洗濯はユージが担当しているようだが、タカが家事をしている姿が想像つかない)、2人に娘がいるのではないかという展開も新しかった。これまでの2人からは、まったくプライベートが見えなかったからだ。

 映画の中盤、探偵事務所でタカとユージと彩夏の3人が共同生活を送る場面がある。どっちが本当の父親かどうかは関係なく(気にしているようで、あまり気にしていないところがいい)、食卓を囲んでいる3人の姿はまるでホームドラマに出てくる家族のように見えた。これまでずっと男同士のバディとして結びついていたタカとユージの絆が、ぐっと温かいものに見えた瞬間だった。

 そんな最中、彩夏が2人にこう問いかける。「もしかして、愛し合ってる?」。ユージとタカはすかさずこう返した。

「俺はタカのためだったら、いつだって命を賭けられる」
「俺もさ」
「それを愛と言うのなら、そうかもしれない」

 実際、これまでのシリーズで何度となくお互いの命の危機を、全力で助けに行っていた。刑事の職務も損得もすべて超えた信頼と絆。命を分け合う関係。それってもう「愛」だ。薄々みんな気づいていたが、ついにふたりの口から「愛」という言葉が出た。間違いなくタカとユージの間には愛がある。38年目の告白だった。個人的には、ここが本作のクライマックスだったような気がする。ちなみに柴田恭兵は初日舞台挨拶で「舘さんに『I LOVE YOU』と伝えたい。もう夫婦です」と語っている(スポーツ報知 5月25日)。

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