『マッドマックス:フュリオサ』初登場で北米1位 ハリウッドの夏商戦にWストライキの影

『マッドマックス:フュリオサ』北米1位に

 現状、初夏の公開作で気を吐いたのは『猿の惑星/キングダム』のみ。今週は第4位(公開3週目)で、北米興収は1億2280万ドル、世界興収は3億ドルが間近に迫った。こちらは黒字化確実とみられるが、それでもシリーズの過去作よりは数字がふるっていない。

『猿の惑星/キングダム』©2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 サマーシーズンの華々しい幕開けとなるはずの5月が、なぜこれほど寂しい結果となったのか。現地報道ではっきりと指摘されているのは、2023年に実施された全米脚本家組合&全米映画俳優組合によるストライキの影響だ。長期の製作中断で多くの話題作が公開延期となったことは、今夏の映画興行に大きなダメージをもたらした。メモリアル・デーの週末成績は前年比およそ64%にとどまったのだ。前年の第1位は、実写版『リトル・マーメイド』(2023年)の1億1800万ドル。今年のトップ2とは数字を比べるまでもないだろう。

 また、2023年の年間興行成績はコロナ禍からの回復傾向を強調する結果に終わったが、今年の累計成績を前年同時期と比較すると約78%にとどまり、その傾向は完全に止まったというほかない。昨年の下半期はPR活動が十分に行えず、『バービー』や『オッペンハイマー』といった例外はあったが、映画館から全体的に客足が遠のいた。いくつかの話題作を除き、その影響は――あるいはコロナ禍からの影響は――今でも変わらず続いていると見たほうがいい。

 2023年のWストライキは、映画業界や労働環境の改善という点では大きな意義があった。そのことは疑うべくもないが、しかしながら映画産業に大きなダメージを与えたこともまた確かだ。映画をつくって宣伝するにはコストがかかり、そのコストを回収できなければビジネスとしては縮小せざるをえなくなる(現にハリウッドのスタジオ各社は「小さいコストで小さく稼ぐ」スタイルをほとんど隠さなくなった)。このことがつづけば、ストライキで求めていた十分な報酬と待遇を得られる労働者も結果的に少なくなりかねない。理想を妄信的に支持するだけではどうにもならない問題だ。

『インサイド・ヘッド2』©️2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 ストライキの影響は今後も数年スパンで続くだろうが、ひとまず映画業界・映画館業界はこの夏をどう乗り切るか。『インサイド・ヘッド2』や、その後の『怪盗グルー』第4作と『デッドプール&ウルヴァリン』が、現在のムードをぶち壊してくれることに期待をかけるしかない。

北米映画興行ランキング(5月24日〜5月26日)

1.『マッドマックス:フュリオサ』(初登場)
2550万ドル/3804館/累計2550万ドル/1週/ワーナー

2.『The Garfield Movie(原題)』(初登場)
2477万ドル/4035館/累計2477万ドル/1週/ソニー

3.『ブルー きみは大丈夫』(↓前週1位)
1610万ドル(-52.2%)/4068館(+27館)/累計5866万ドル/2週/パラマウント

4.『猿の惑星/キングダム』(↓前週2位)
1335万ドル(-47.5%)/3550館(-525館)/累計1億2280万ドル/3週/20世紀スタジオ

5.『フォールガイ』(↓前週4位)
592万ドル(-29.1%)/2955館(-890館)/累計7221万ドル/4週/ユニバーサル

6.『The Strangers: Chapter 1(原題)』(↓前週3位)
561万ドル(-52.6%)/2856館(変動なし)/累計2134万ドル/2週/ライオンズゲート

7.『Sight(原題)』(初登場)
269万ドル/2100館/累計269万ドル/1週/Angel Studios

8.『チャレンジャーズ』(↓前週5位)
138万ドル(-51.9%)/1089館(-849館)/累計4647万ドル/5週/Amazon・MGM

9.『Back to Black(原題)』(↓前週6位)
110万ドル(-61.2%)/2013館(+3館)/累計499万ドル/2週/Focus Features

10.『Babes(原題)』(↑前週18位)
106万ドル(+549.8%)/590館(+578館)/累計128万ドル/2週/NEON

(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2024年5月27日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)

参照

※ https://realsound.jp/movie/2024/02/post-1571416.html
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2024W21/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/furiosa-box-office-garfield-worst-memorial-day-1235909084/
https://variety.com/2024/film/box-office/box-office-shocker-furiosa-garfield-movie-tie-first-place-bleak-memorial-day-weekend-1236016762/
https://deadline.com/2024/05/box-office-garfield-furiosa-1235941424/
https://deadline.com/2024/05/indie-film-box-office-babes-neon-blasts-off-1235941513/

■公開情報
『マッドマックス:フュリオサ』
5月31日(金)全国ロードショー 日本語同時上映
日本語吹替版/IMAX®/4D/Dolby Cinema®(ドルビーシネマ)/ScreenX
監督:ジョージ・ミラー
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories.
公式サイト:MADMAX-FURIOSA.jp

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