『アンチヒーロー』弾劾裁判で明墨が追及したこと 神野三鈴が転落する裁判官を熱演
明墨は何度も瀬古にチャンスを与えていた。裁判官の良心に訴え、罪を認めてやり直すように暗に伝えた。弾劾裁判で罷免されると法曹資格を失い、法律家として生きることはできない。しかし、瀬古はすでに引き返せないところにいた。議員や閣僚、裁判官に「この国では圧倒的に女性が少ない」と語る。“ガラスの天井”を破るために「私が上に立って成果を上げるしかない」という瀬古の覚悟は切実である。けれども瀬古は方法を誤った。力を求めるうちに力に麻痺し、いつしか冤罪さえ生んでいた。
『99.9-刑事専門弁護士-』(TBS系)への言及があるなど、2024年現在、この国のリーガルドラマが見すえるテーマを本作も共有していて、そのことは、伊達原から瀬古への「はて?」や、道を踏み外した瀬古の人物像からも明らかだ。明墨の「やられる前にやるんです」という『半沢直樹』(TBS系)を想起させる台詞や「不適切にもほどがある」と憤る瀬古のシーンもあり、遊び心とともに過去作との連続性が感じられる。
瀬古が陥落したことで事態は急展開する。沢原は控訴審で無罪になり、松永(細田善彦)は再審が開始されて判決が覆った。赤峰(北村匠海)は松永との約束を果たした。そして、ついに12年前の一家殺人事件に光が当たる。刑務所にいる志水(緒形直人)に明墨がかけた言葉は、これまでと違いストレートに呼びかけるものだった。紗耶(近藤華)の近況を伝え、「あなたを必ず無罪にしますから」と力強く宣言する明墨に勝つ公算はあるのか。緋山(岩田剛典)と12年前の事件との関係や、緋山が探す江越の行方も気になるところだ。新事実とともに真実が明らかになることを期待したい。
■放送情報
日曜劇場『アンチヒーロー』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、木村佳乃、野村萬斎
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵
演出:田中健太、宮崎陽平、嶋田広野
脚本:山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平
音楽:梶浦由記、寺田志保
主題歌:milet「hanataba」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
法律監修:國松崇
警察監修:大澤良州
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