日曜劇場に新風を吹き込んだ『アンチヒーロー』 4人の脚本家体制は日本のドラマを変える?

『アンチヒーロー』の脚本家体制を分析

 日本のテレビドラマは、1人の脚本家が全話を執筆するケースが多く、良くも悪くも1人の脚本家の作家性に依存したものとなっているため、クオリティの落差が激しい。対して、海外ドラマで主流となっている全体を統括するショーランナーの元で複数の脚本家がチームを組んで各話を仕上げるという脚本執筆方法は、うまく転がすと作品全体の底上げが可能になる。

 これまで国内では定着してこなかったやり方だが、2019年にNetflixで配信されたドラマ『全裸監督』を筆頭に日本でも少しずつ取り入れられつつある。『アンチヒーロー』のような法律等の専門知識が求められる複雑な群像劇を一人の脚本家が受け持つことには限界があるため、複数の脚本家チームによる脚本執筆は、地上波のテレビドラマでも定着していくのではないかと思う。

 そんなチームによる脚本執筆の成果がいよいよ出てきたなと感じたのが第6話である。

 赤峰は、これまで明墨が担当してきた裁判の関係者が、糸井一家殺人事件と関連していることに気付き、情報漏洩事件の裁判を担当している判事の瀬古成美(神野三鈴)が糸井一家殺人事件で、志水に有罪判決を言い渡したことを知る。

 明墨の目的は瀬古判事の背後にある闇を暴くことで、そのためにこの裁判を引き受けたことが明らかとなる。そして、これまで行ってきた容疑者を無罪にする裁判は、背後にいる裁判官や政治家の闇を暴くために仕掛けたものだったことが明らかとなる。

 事件を起こした容疑者の弁護ではなく、裁判の背後にいる冤罪を仕組んだ権力者との戦いこそが真の目的だと判明したことで、今まで無関係に思えたこれまで描かれてきた裁判が一つにつながり、新たな意味を帯びる構成は実に見事だ。

 複数の脚本家によるチームプレイだからこそ実現できた、実に練られた展開である。

■放送情報
日曜劇場『アンチヒーロー』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、木村佳乃、野村萬斎
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵
演出:田中健太、宮崎陽平、嶋田広野
脚本:山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平
音楽:梶浦由記、寺田志保
主題歌:milet「hanataba」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
法律監修:國松崇
警察監修:大澤良州
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antihero_tbs/
公式X(旧Twitter):@antihero_tbs
公式Instagram:@antihero_tbs
公式TikTok:@antihero_tbs

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