高橋一生、“花火”に重なる芝居への思い 『6秒間の軌跡』の現場で感じた“寂しさ”も告白

高橋一生、“花火”に重なる芝居への思い

コロナ禍で感じた気持ちは忘れるべきものではない

――もともとこの作品は高橋さんとプロデューサーである中込卓也さんの会話の間で「親子」「花火」「幽霊」という3つのワードが出てきて、それを元に橋部敦子さんが脚本を書かれたとのことですが、そのワードが出てきた経緯を教えてください。

高橋:コロナ禍の時、撮影がストップしてしまいひと月半ほど休みができたんです。その時に、いつもはその時期に開催されているはずのお祭りがやっていないことに気づいて。あぁ、中止になったんだなと思っていたら、たまたまテレビでコロナ禍における花火業界の特集をやっていて、それが心に引っかかっていたんです。基本的に日本のお祭りは神様に感謝するための神事。盆踊りも輪の中心には神様がいて、みんながそれを囲んで踊るわけです。花火に関しても元々の目的は鎮魂であって、必要なものなんじゃないかと思うんです。それをあの時、「不要不急だ」「不謹慎だ」と言って本当に止めるべきだったのかどうか、僕は今となっては正直分からないですね。だから、星太郎が自分のために上げた花火が、幽霊や落ち武者の人まで届く前作のラストは、僕が心の中で望んでいたことでもありました。

――自分が上げたいから上げた花火が誰かの心に届くというのは、エンターテインメントともすごく繋がるなと思いました。高橋さん自身もコロナ禍での星太郎の苦しみに共鳴する部分が少なからずあったのではないでしょうか?

高橋:いろんなことが抑圧されたあの時の気持ちは、忘れるべきものではないと思いますね。きっと傷ついた方もたくさんいらっしゃったと思いますし、収束したから「はい、元通りです」と言われても、そんな簡単に戻れるはずがないと思っていたほうがいいような気がします。そういったことを踏まえて、「自分に立ち返ってやるべきことはやるべきだし、それが巡り巡って誰かのためになるはずだと信じるしかない」というメッセージを前作で打ち出せたんじゃないかなと思います。星太郎は誰かのためになっているなんて思ってもいないかもしれないけれど、自分の花火を極めたいという気持ちは、お芝居をやっている僕の思いとも通ずる部分ではあります。続編では星太郎のもっと内面的なところに踏み込んでいるので、そこにも注目していただければ嬉しいです。

『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』第2話場面カット

――続編で新たに宮本茉由さん演じる野口ふみかが登場となり、星太郎に弟子入り志願します。彼女の存在によって、星太郎の中で望月煙火店の五代目としての自覚がより芽生えてくるのでしょうか?

高橋:やっぱり外部の人間の存在によって、自分の立ち位置がはっきりと見えてくるというのは往々にしてあると思います。野口さんもそういう存在にはなるのかなとは思いますし、彼女が望月家に入ってくることによって、会話のテンポにも違いが出てくるんですよね。今まで親父と水森さんと3人の時は丁々発止としたやりとりが多かったのですが、野口さんがまた違う見地で発言したり、急によく分からないことを喋り出すと一旦会話がストップするんです。そこに田中勇人(小久保寿人)が入ってくると、また良い意味でリズムが崩れて面白くなりますし、どんどんバリエーションが増えていくところも楽しんでいただきたいです。

――星太郎さんに弟子入りするふみかのように、高橋さんに憧れて役者を志す方もいらっしゃると思いますが、芸歴が上がっていく過程で現場でのあり方をより意識するようになったというようなことはありますか?

高橋:僕に憧れてこの世界に入ってくる人はいないと思いますが(笑)、自分のほうが年次が上だからといって何かを意識することは特にありません。会社と違って教えられることも少ないと思うんです。ただメインの役を任せられるようになってくると、その現場の空気感を司る何者かにはなってしまうんです。監督やプロデューサーの方の持つ雰囲気で現場の空気感が変わったりもしますけれど、やっぱり主役と呼ばれる人たちが率先して現場を和やかにしてくださることが多いので、僕もみんなが楽しく仕事ができるようにできる限りのことができたらいいなとは思っています。

――本田さんも最初はすごく緊張されていたそうですね。

高橋:僕はヅメさんがいたので、何の緊張もなかったんですが、本田さんは僕とヅメさんが親しいのも分かっている上で現場に入られてきたので、やっぱり身構えてしまうところは多少なりともあったと思います。今回に関してはすっかりそれが解消されているので、次は宮本さんですね。でも宮本さんもすでにかなり緊張がほぐれてきて、撮影も楽しい雰囲気で進められています。前作のときは非常に寂しい思いをしたので……。

――寂しいというのは?

高橋:僕が朝現場に入ると大抵、本田さんがいるんです。そこから本田さんと2人のシーンを撮影して、終わると本田さんが帰って、入れ替わりでヅメさんが現場入りするんです。「今日はラストまでヅメさんとの撮影だな」と思っていたら、ヅメさんは途中で帰ってしまって、あとは僕の一人だけのシーンを撮って終わる。そんな感じだったので、寂しかったですね。せめてみんな揃って終われたら……って、これはただの愚痴です(笑)。ただ夕方5時のチャイムを一人虚しく聞いていました、ということはここで表明しておこうと思います。

■放送情報
土曜ナイトドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:高橋一生、橋爪功、本田翼、宮本茉由
脚本:橋部敦子
監督:藤田明二(テレビ朝日)ほか
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、後藤達哉(テレビ朝日)、山形亮介(KADOKAWA)、新井宏美(KADOKAWA)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:KADOKAWA
©︎テレビ朝日
公式サイト :https://www.tv-asahi.co.jp/6byoukannokiseki_2/
公式X(旧Twitter):@6secEx
公式TikTok:@6secex

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