ユ・テオの卓越した表現力とグローバルな感性 『パスト ライブス』からさらなる飛躍へ
『パスト ライブス/再会』のインタビューで、「無表情のときは、落ち着いた大人の印象があるけど、笑ったり表情が変わったりすると、ピュアで若々しく見える」と監督から評価されたと話しているが(※2)、ユ・テオという俳優は、寂し気な雰囲気をまとっていることも大きな魅力といえる。それは少年のようなくしゃっとした笑顔にも漂い、悪役を演じるときにも活きてくる。
例えば、日本ではあまり知られていないが、韓国でユ・テオの評価が高まった作品に『マネーゲーム』というスタイリッシュな経済ドラマがある。ユ・テオは、本作でアメリカの投資会社の韓国系アメリカ人を演じている。韓国経済を揺るがすクレバーな悪役なのだが、時折寂し気な笑顔を見せ、どこか危うい。悪役なのに、どうしようもなく切ない気持ちにさせるのだ。
カンヌ国際映画祭に出品され韓国で最初にユ・テオの名が注目された映画『LETO -レト-』(2018年)も、そんなユ・テオの魅力を語る上で欠かせない一作だろう。
『LETO -レト-』では、実在の人物であるヴィクトル・ツォイに扮している。80年代のペレストロイカの中で若者から絶大な支持を得たロックバンドkinoのボーカルで、28歳の若さで亡くなった英雄的なミュージシャンだ。ロシアなど旧ソ連地域の朝鮮半島出身の人々を“高麗人”と呼ぶが、ヴィクトル・ツォイも高麗人である。ユ・テオは、本作でもどこか影があり寂し気だ。その横顔は、自由を追い求めたロックスターの孤独を感じさせる。
ベトナム映画やタイ映画にも出演し、長い無名生活を経て韓国ドラマの主演を射止め、国際的にも注目される場に立ったユ・テオ。『パスト ライブス/再会』では朴訥とした主人公を演じ切り、クールな役が多かった彼の違った面が見られた気もする。次に期待されるのは、主演に抜擢された米Netflixドラマ『ザ・リクルート2』。韓国国家情報院のエージェントを演じるという。卓越した表現力とグローバルな感性を活かしてどう羽ばたいていくのか、今後も楽しみだ。
参照
※1 https://happinet-phantom.com/pastlives/
※2 https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2235706
■公開情報
『パスト ライブス/再会』
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
監督・脚本:セリーヌ・ソン
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ
提供:ハピネットファントム・スタジオ、KDDI
配給:ハピネットファントム・スタジオ
106分/2023年/アメリカ・韓国/カラー/ビスタ/5.1ch/英語、韓国語/字幕翻訳:松浦美奈/原題:Past Lives/G
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