河合優実の歌声に集約された『不適切にもほどがある!』の凄み “時代”からの解放がここに
主演・阿部サダヲ、脚本・宮藤官九郎、プロデューサー・磯山晶という、それこそ第6話で引用された『池袋ウエストゲートパーク』をはじめ、『木更津キャッツアイ』、『タイガー&ドラゴン』というまさに各時代を象徴するようなTBSドラマの作り手たちが手掛けた『不適切にもほどがある!』は、「昔はよかった」と語ることを通して令和の在り様を批判するドラマでは決してなく、「時代」へのこだわりから人々を解放するドラマなのではないか。
あまりにも自由に行き来し過ぎてどっちがどっちか分からなくなりそうなほどに昭和と令和を描いた結果、「時をかける昭和のおじさん」だった市郎も、「令和時代の代弁者」として市郎たち昭和の人々に物申すはずだったサカエ(吉田羊)も、気づけばそれぞれが背負った「時代」を象徴するキャラクターを捨て、ただそこにいる。片や令和で「ここは任せて。みんな、自分の仕事に戻って、帰れる人は帰って」と呼びかける理想の上司になって、片や昭和で『金曜日の妻たちへ』(TBS系)を観て涙ぐむ。互いにちょっとずつ影響を受け、変わっていった2人の姿は、第1話の秋津の歌のように、「話し合うこと」の重要性を教えてくれる。
昭和のおじさん・小川市郎を主人公にした「意識低い系タイムスリップコメディ」は、折り返し地点において、令和を生きる孫娘と昭和を生きる娘を心配するあまり時をかけ続けるおじいちゃん・市郎の物語に様相を変えた。この先市郎と純子は、「早すぎる死」に向かって淡々と歩いていくしかないのか。それとも。物語の鍵を握るのは、第1話序盤において令和を疾走する市郎の姿とともに、昭和を疾走する姿が描かれたキヨシかもしれない。
■放送情報
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:阿部サダヲ、仲里依紗、磯村勇斗、河合優実、坂元愛登、三宅弘城、袴田吉彦、中島歩、山本耕史、古田新太、吉田羊
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:磯山晶、勝野逸未
演出:金子文紀ほか
主題歌:Creepy Nuts「二度寝」(Sony Music Labels)
編成:河本恭平、松本友香
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
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