ドラマ版『パリピ孔明』しか知らない人へ “まるでライブ”なアニメ総集編の衝撃は体験必須
2023年秋のドラマ版では、向井理が古代中国の名軍師・諸葛孔明を、上白石萌歌が主人公・月見英子を演じ、多くの新たなファンを獲得した『パリピ孔明』。その盛り上がりが、ドラマの全視聴者をフロアで踊る“パリピ”へと変化させる勢いだったことは記憶に新しい。
ドラマ版『パリピ孔明』(フジテレビ系)は、それより前に放送されていたアニメ版との違いが多くあり、視聴者の間で話題となっていた。そこで、ドラマで作品の魅力にハマった人にぜひ観てほしいのが、3月1日から全国公開中のアニメ総集編『パリピ孔明 Road to Summer Sonia』だ。本作はアニメシリーズ全12話から英子がサマーソニアへの出演権を勝ち取るエピソードをピックアップし、新たに加えられたライブシーンとともに再構成している。
そもそも前提として、ドラマでは英子の演技と歌唱パートの両方を上白石が担当していたが、アニメ版では演技と歌唱を分けるWキャスト制を導入している。英子の役では、声優の本渡楓が演技を、96猫が歌唱を担当。英子の親友・久遠七海役では、声優の山村響が演技、Lezelが歌唱を務めている。普段アニメを見慣れていない人は驚くかもしれないが、この手法は近年のアニメ作品においてはそう珍しくない。
また、実際にアニメを観てみると、上白石演じる“英子”が歌う楽曲と、96猫が歌う“英子”の楽曲は別物であることに気がつくはずだ。例えば、ドラマ版の第3話で英子が披露する楽曲「DREAMER」は、幾田りらによって作られたドラマのための新曲で、アニメで96猫が歌う「DREAMER」とはテンポも歌詞も異なる。ドラマで上白石演じる英子が披露した、透き通るような伸びる歌声を先に耳にした視聴者は、映画館の音響で聴く、96猫のパワフルな英子の歌声に驚くことだろう。
ここまでの理由だけでは「アニメシリーズを家で視聴すればいいのでは?」と思う人もいるかもしれない。しかし、アニメ総集編『パリピ孔明 Road to Summer Sonia』を勧める理由は、アニメ版よりも、圧倒的に“一気見”に適しているからだ。劇場版では、映画館のハイクオリティな音響は言うまでもなく、わずか2時間の中でアニメ全12話分に登場した計15曲もの楽曲を楽しむことができる。また劇場版では、成長を重ねていくキャラクターの歌声を比較しやすいのも大きな魅力の一つだ。
例えば、劇場版における渋谷109前での仮面アイドルユニットAZALEA(アザリエ)のゲリラライブシーンでは、七海の歌の鮮やかな違いが際立つ。仮面をつけて演じる「UNDERWORLD」と、初期の音楽の楽しさを思い出しながら歌う「ChocoPate」という楽曲の性質の違いが、劇場版ならではの流れるような物語の進行によってストレートに感じられた。
また、アニメ総集編『パリピ孔明 Road to Summer Sonia』がアニメ版と比べてより鑑賞しやすい理由の一つに、KABEと孔明のラップパートに字幕が追加されていることが挙げられる。ドラマ版では字幕がついていたからこそ気にならなかった視聴者も多いかもしれないが、アニメ版のラップシーンには字幕がない。そこを改善した上で、アニメならでは白熱する2人を武将に見立てた描写はそのままに……といいとこ取りになっているのが総集編なのだ。
さらに、総集編でカットされた部分をスムーズに補うために、各キャラクターのモノローグとしての新しいボイスを追加することで、物語の流れに違和感がないよう工夫がなされている。そのため歌唱シーンだけでなく、日常パートのクスッと笑える部分もしっかりと楽しめる構成になっていた。