『ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』に詰まった青春の最盛と終焉 完璧な“試合映画”に

『ゴミ捨て場の決戦』は完璧な“試合映画”に

 無論本気で研鑽を重ねてきて春高バレーの場に立つ彼らと映画館の快適な椅子に85分座っているだけの自分など比べるべくもないのだが、それでもやはり感情が乗っかってしまい、映画が終わった瞬間は本当に寂しさに襲われた。もう終わってしまった。ずっと続けていたかったと。これはやはり、話が終われば強制的に放り出される映画館でしかできない体験だろう。

 映画館というのはそれ自体日常と切り離された空間を演出しているが、それが青春の最盛と終焉である全国大会の一試合に気持ちよくコネクトする。試合が終われば片方は青春にピリオドを打つものの人生は続き、同時に我々観客も映画が終われば否応なく現実を生き続けなければならない。この一抹の寂しさ。これはやはり映画という枠、そして試合という枠に青春(とひとまとめにしていいかは不明だが)が詰まっているからこそ成立できたものであり、だからこそ回想シーンは必要なものなのだと改めて思う。

  もっとも、この感覚がすべての試合映画で体験できるとは限らない。こと『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』においてこの体験ができたのは、やはり焦点の当て方が絶妙だったからだ。そもそも原作漫画の出来がいいという前提を忘れてはいけないが、しかして映画館で観てこそという体験ができたのは、満仲勧監督をはじめとした『ハイキュー‼!!』シリーズのアニメを作ってきたスタッフの卓越した技術と才能の賜物なのは間違いない。

 というわけで『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が映画館で観てこそ輝く作品であることを述べたわけなのだが、結局言いたいことは『ハイキュー!!』を知らない人でも、映画ファンなら本作を観てほしいということだ。本作のように、映画館ならではの体験を味わえる作品はさほど多くない。映画を観終えた後の一抹の寂しさと充足感。これは自分の個人的体験であるものの、やはり映画館で映画を観るという普遍的な行為に結びついているのではないかと思う。そうでなくとも、試合シーンの迫力がアホほど凄いのでどちらにせよ楽しめるのは間違いない。

■公開情報
『劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦』
全国公開中
監督・脚本:満仲勧
原作:『ハイキュー‼』古舘春一(集英社ジャンプ コミックス刊)
キャスト:村瀬歩、石川界人、日野聡、入野自由、林勇、細谷佳正、岡本信彦、内山昂輝、斉藤壮馬、増田俊樹、名塚佳織、諸星すみれ、神谷浩史、江川央生、梶裕貴、中村悠一、立花慎之介、石井マークほか
製作委員会:東宝、集英社、MBS、電通、Production I.G、SME、ムービック
制作スタジオ:Production I.G
配給:東宝
©「ハイキュー‼」製作委員会 ©古舘春一/集英社
公式サイト:https://haikyu.jp/
公式X(旧Twitter):@animehaikyu_com

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