スピルバーグからの影響やVFX、AIの話題も 山崎貴、ハリウッドで『ゴジラ-1.0』を語る

VFX業界を目指す若いアーティストには「好奇心を持ち続けてほしい」

(左から)ピーター・フランス、山崎貴

フランス:会場からの質問を受けつけましょうか。

質問者:日本の作品、そしてアメリカの映画にも戦争や終戦を扱った作品が増えていると思います。世界情勢の影響や、このような時期にどんなことを演出に取り入れられたのかを教えていただけますか?

山崎:最初はそんなに戦争の匂いはなかったので、撮影しているときはむしろCOVIDの影響の方が大きかったです。特にポスプロの最中にかなり戦争の匂いがしてきて、そういう映画を作っていたら、世の中が戦争の方に傾いていく、宿命的な感じがしました。今、日本のボックスオフィスを賑わせている映画には、戦後の社会を描いた作品が多いので、いろいろなクリエイターたちの間に戦争の恐怖や反戦の思いが高まっているのではと思っています。

質問者:山崎監督はどのようにキャリアを始められたのでしょうか? また、脚本家、監督、VFXスーパーバイザーの職種で最も楽しいのはどれですか?

山崎:最初は、VFXのミニチュアを作る人間として会社に入りました。会社に入ったら、まだVFXスーパーバイザーがいなかったので、社長に「山崎、全部仕切れ」って言われて、まだ20歳そこそこだったんですけど、すぐスーパーバイザーになったんです。子供の頃からの夢だったので、その仕事ができてすごく嬉かった。例えば伊丹十三監督の映画に参加して、「映画やってるよ」と思ってすごく嬉しかったんですけど、ある日気がついたら、僕が関わっている映画に怪獣は出てこないし、宇宙船は出てこないし、ロボットも出てこないし……と思って、「あれ、俺こういうの作りたかったんだっけ? これ、どうにかしなきゃ」と、監督になることを決めたんです。監督になるためにどうすればいいのか、企画を出すにはどうすればいいかって考えたら、脚本を書くのが一番早い道かと思って、脚本を書いて、監督になれた。そういう流れでした。一番楽しいのは……まあ大体どれも楽しいですね。脚本を書いているときは、いろいろ想像して楽しいし、監督はキャストといろいろコラボするのも楽しいし、VFXの最終的な仕上がりは現場でかなり決まってしまうので、どういうものを現場に投入するかをみんなと考えているのがすごく楽しいです。VFXは、できたばかりの映像を観られる最初の観客になれますからね。それもすごく楽しい。まあどのパートも全部楽しいですね。この3つの仕事というのは、一つのかたまりの仕事なので、どこをとって楽しいとは言えないんですけど、映画監督という仕事ができて本当に嬉しいなあと思っています。

質問者:1945年の『ゴジラ』を除いて、どのゴジラ映画が好きですか?

山崎:『シン・ゴジラ』ですね。あまりにも素晴らしかったので、次はちょっと大変だなーって思ってたんです。公開時に、「『シン・ゴジラ』どうですか?」っていうコメントを求められたんですね。「本当に次の監督は大変ですね」って書いたら、自分でした(笑)。

(左から)山崎貴、ピーター・フランス

質問者:AI生成の映像についてどうお考えですか? あなたの仕事の一部分を担うことは考えられますか?

山崎:うーん、使いたくなっちゃうけど、使っちゃダメかなと思いますね。いくつか試したこともあるんですが、今のところは最終的なものにはならない気がします。これからどんどん進んでいくと、ちょっとわからないですが、なにを描かせても既視感のあるものになっている感じがするんですね。本能的に拒否しちゃうものになっている気がする。まだ怪しいなあと思っていますし、ものを作ることと意外と相性が悪いんじゃないかなってちょっと思っています。でもまだわからないです。来年になったらものすごい勢いで使っているかもしれないです(笑)。今は反対派ですけれどね。

質問者:俳優への演出についてお聞きします。脚本に書かれている、船やゴジラが追いかけてくるといったシーンは後ほどVFXで合成されますが、俳優たちはどのように演じていたのでしょうか。

山崎:プリビズという簡単なCGでこういうシーンになりますよっていうのを作り、それを見てもらったりとか、iPhoneで見ると本当にゴジラがいるように重ねて見えるARのソフトを作ったんです。それを見て、カメラマンは大体それぐらいの船ねとか、キャストの皆さんもこれくらいなので、と確認してやっていました。すごく勘のいいキャストの方々なので、このくらいの恐怖感でやれば、ゴジラにはちょうどいいんだろうなっていう調整をしてくれたので、非常にキャストに恵まれたと思います。ただ、船の上のシーンで海に出た時は、みんな酔っちゃって大変でした。敷島(神木隆之介)が怒るシーンで、唇の色が紫に変わってるんですね。みんなが、「神木くんすごい! 怒るシーンで唇の色まで変えられるなんて!」と言っていたんですが、あれは船酔いで吐きそうな直前だからあの色だったという(笑)。そこはちょっと苦労をかけましたね。

山崎貴

フランス:素晴らしい映画と素晴らしい舞台裏のお話で、世界中の若いアーティストに多大なインスピレーションを与えてくださいました。VFX業界を目指す若い方々へのアドバイスをお聞かせいただけますか?

山崎:好奇心を持ち続けてほしいなと思います。新しいもの好きであることって、すごく大事な気がしていて。いろいろな技術が出てきますが、それを「俺はこれやらない」って拒否するんじゃなくて、ああこういうやり方もあるんだと取り入れられる人が伸びる気がします。好奇心はクリエーションの親であるというふうに思いますね。

フランス:今作の大成功を受けて、新しいプロジェクトも動いているのではないでしょうか? おそらくNDA(秘密保持契約)があるので言えないことだらけだと思いますが……。

山崎:言えるわけないじゃないですか!(爆笑)。いろいろなプロジェクトが動いていますから、楽しみにしていてください。ゴジラのおかげで、今まで以上に仕事がしやすくなったと思います。本当に北米の方々が認めてくれたのはすごく大きくて、今までなかなか企画が通らなかったようなものもすごく通りやすくなると思うので、またすごいやつを作って持ってきたいなと思います。

■公開情報
『ゴジラ-1.0』
全国東宝系にて公開中
出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介ほか
監督・脚本・VFX:山崎貴
音楽:佐藤直紀
制作プロダクション:TOHOスタジオ、ROBOT
配給:東宝
©2023 TOHO CO.,LTD.
公式サイト:https://godzilla-movie2023.toho.co.jp
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