秋山竜次、木梨憲武、原田泰三、福田麻貴ら、1月期ドラマで存在感を増すお笑い芸人たち

 お笑い芸人を役者として起用するドラマが当たり前のようになった。最近は1作品に1人は芸人が出演しているといっても過言ではなく、特に1月期はその活躍が目覚ましい。『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)のとんねるず・木梨憲武(※奈緒とW主演)、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(東海テレビ・フジテレビ系/以下、『おっパン』)のネプチューン・原田泰三、『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)の3時のヒロイン・福田麻貴にいたっては堂々の主演だ。 

 『春になったら』は、3カ月後に結婚する娘の瞳(奈緒)と3カ月後にこの世を去る父・雅彦(木梨憲武)が織りなすホームドラマ。本当の親子みたいな2人の自然なやりとりが毎回反響を呼んでいる。雅彦はステージ4のすい臓がんを患っているが、最期まで自分らしく生きるために治療は受けないと決めている。ひょうひょうと日常を送るその姿はいつもの“ノリさん”。だが、ふと画面から匂い立ってくる哀愁と死の気配に涙腺がやられてしまう。誰もが瞳の立場に自分を置き換え、親を心配してしまうのは、そんな木梨の味のある芝居あってこそだろう。

『春になったら』©︎カンテレ

 『おっパン』の原田も、木梨とはまた違った意味で切ない役柄。「お茶は女性が淹れてくれた方がおいしい」「ゲイがうつる」など、原田が演じる主人公の誠は偏見まみれで時代錯誤も甚だしい昭和の“おっさん”だ。「あぁ~こういうおじさんいるよね……」とつい顔を歪めてしまうが、誠の場合は内省的なところがあり、もはや自分に愛想を尽かしている家族のために価値観のアップデートに努めていく。原田は昨年、NHKで放送されたスペシャルドラマ『生理のおじさんとその娘』でも、生理について娘と対立する父親という少し近しい役柄を演じた。こうした社会派の側面を持つドラマは人によってはどうしても説教臭く感じてしまうが、原田がほどよくユーモラスに中年男性の成長物語を体現してくれるから新しい価値観の押し付けにはならない。若い人にもおじさんの悲哀を見せ、双方の橋渡し的な役目を担ってくれている。

『婚活1000本ノック』©︎フジテレビ

 ヒロイン初挑戦の福田が『婚活1000本ノック』で演じるのは、かつて自分を弄び、挙句に女性の恨みを買って幽霊になったクソ男(八木勇征)と婚活に挑む売れない小説家の綾子だ。好きになるのはいつも不誠実な男性ばかり。愛されたいとは思いつつも、傷つきたくなくてどこか恋愛に対して必死になれず、いざ始めた婚活ではいい人に出会うも生理的に好きになれない……といった“恋愛あるある”を本作は映し出す。福田がひと癖もふた癖もある男性たちに心の中で鋭いツッコミを入れつつ、良い意味で力の抜けた演技で役に挑んでいることもあり、ドラマというよりどこか長編コントのよう。一方で要所に切なさも溢れ、身につまされる視聴者も多いのではないだろうか。

関連記事