『ブギウギ』趣里に道標を与える草彅剛の存在 重要な意味を持つ“自分自身と向き合うこと”

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の第16週となる「ワテはワテだす」が放送された。「福来スズ子とその楽団」の解散後、スズ子(趣里)は喜劇王のタナケンこと、棚橋健二(生瀬勝久)の舞台に出演し、歌だけでなく芝居の仕事にも挑戦することになった。このタナケンとの出会いは、スズ子がかつて羽鳥善一(草彅剛)と出会った頃のことを想起させる。スズ子が表現を磨く節目節目において、自分自身と向き合うことは非常に重要な意味を持つのだ。

 そもそもスズ子を芝居へと導いたのは善一である。スズ子のための新曲「コペカチータ」を書き上げた善一は、タナケンの舞台でお披露目してもらうべくスズ子を推薦した。そして善一の後押しの中で、スズ子は芝居の道へと足を踏み入れるのだ。

 だがタナケンは、スズ子がどんな芝居を見せても、黙っているばかり。スズ子は初めての芝居、しかも慣れない東京弁のセリフに苦労し、お世辞にも上手いとは言えない状態だったが、それでもタナケンはスズ子にアドバイスを送ることはなかった。しまいには他の劇団員からも嫌味を言われる始末で途方に暮れるスズ子だが、とうとう善一の元を訪ねる。善一は「間が違う」と指摘されたというスズ子に、「少しくらいならリズムがずれても面白いだろ。そこからまた違うノリが生まれるかもしれない」と話すのだった。

 この過程こそが、スズ子が善一との初仕事として「ラッパと娘」に挑んだときと同じ流れなのである。わからないなりに正解を模索し、最後に辿り着くのはスズ子が持つ“自分らしさ”。上手な東京弁でも、達者な芝居でもない、「他とは違う何かが自分だけの魅力になる」というメッセージは、スズ子が経験してきた芸の道を彷彿とさせる。善一のアドバイスや、小夜(富田望生)からの「どこで何してだってスズ子さんはスズ子さんだ。堂々としててください」という言葉で、スズ子はいつも通りの威勢の良さを取り戻す。

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