福山雅治初のライブフィルムにおける“没入感”とは ドルビーアトモス音響制作が語る裏側

『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM』における“本当の没入感”とは

 今回の映画では、「ライブを超えたライブ」体験を観客に提供するべく、曲の中でもオーディエンスの音が聞こえるようにサウンドのバランスが取られているという。三浦は「普段の福山さんのライブは曲の終わりの拍手は盛り上がるんですけど、演奏中は演奏の音が中心なんですよね。でも今回は福山さんから『演奏中の盛り上がっている感じを出してほしい』というリクエストがありまして。拍手や手拍子も聞こえるようにバランスをとって、ライブ会場にいて本人がそれを体感しているような感じを出しています」と、本作における福山の音へのこだわりを明かした。

(左から)嶋田美穂、三浦瑞生

 一方、嶋田の方ではオーディエンス素材の不必要な音を除去し、音を修復する「レストレーション作業」を行っていた。この作業について、染谷は「音を修復する作業なのですが、当然収録時に入ってしまっている近すぎる拍手や大きすぎる歓声を制御し、滑らかにしていく。シーンにあったクリーニングをする作業です」と解説。嶋田も「ステレオの場合ですと、近い拍手は他の音に隠れて目立たないこともあるんですけど、Atmosだとくっきりと聞こえてくるんですよね。作品としてはそれがノイズになると思うので、レストレーションが必要なんです」とコメントした。

 また、レストレーション作業で注意していたことを聞かれた嶋田は、「コツとしては消しすぎないってことだと思うんです。消しすぎるとメリハリのない空気感になってしまうんです。消しすぎず、薄くしていくことに注意しながらレストレーションのツールを使い分けて作業をしていきました」と続けた。

染谷和孝

 さらには、音を拾うマイクの位置にも強いこだわりが。「今回は武道館の構造も考えてマイクの位置を考慮しました。オーディエンスマイクをいかに細かく配置するか、空間をうまく表現するために必要な高さ方向を再現するためのマイクレイアウトを考えました。合計で28本のオーディエンスマイクを使用して空間を作っています。常に28本のオーディエンスマイクが音楽とともに鳴っているんです」と本作におけるマイクの配置をスクリーンに映した染谷。図解で見ると、今回の録音作業がいかに広大な空間で行われていたのかが改めて実感できるのではないか。

 染谷から今回の音響制作の感想を聞かれた三浦は「データ数も重かったですし、正直未体験のゾーンに踏み込んだと思うのですが、楽しかったですね。ステレオミックスを作って、それがAtmos環境に行った時は感動しました。福山さん自身が目指していた、『ライブを超えたライブ体験』というところで、声が降ってくる感じもいいなと思いましたし。バラードの曲で本人の息遣いが聞こえるのは、普通のフィルムではなかなか再現が難しかったのではないかと思います」と本作の音の見どころを語った。

 最後に嶋田が「ドルビーアトモスの特徴として没入感が挙げられますが、作業を進めていく上でこの作品の本当の没入感とは何かについてずっと考えながら作業をしていたんです。やっているうちに福山さんご自身が没入感そのものなんだろうなとわかってきまして。これに気がついた時には、成功させるしかないなと思いました。ファンの方だけでなく、世界中の方々を幸せで包むイマーシブな作品になったと思います」と締めの言葉を述べ、取材会は終了した。

■公開情報
『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸(さき)わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』
1月12日(金)よりドルビーシネマほかにて先行上映
1月19日(金)より全国ロードショー(4週限定)
監督:福山雅治
出演:福山雅治、柊木陽太
配給:松竹
製作:アミューズ
©︎2024 Amuse Inc.
公式サイト:fukuyamamasaharu-livefilm.com

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