福山雅治初のライブフィルムにおける“没入感”とは ドルビーアトモス音響制作が語る裏側

福山雅治ライブフィルム音響制作が裏側を語る

 1月12日よりドルビーシネマほかで先行上映、1月19日より4週間限定公開される『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸(さき)わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』。公開に先駆けて、IMAGICAエンタテイメントメディアサービスの試写室にて取材会が行われた。イベントには、本作の音響制作を担当した染谷和孝、三浦瑞生、嶋田美穂が登壇。最新の音響技術であるドルビーアトモスでの音響制作の過程を語った。

ドルビーアトモスで創り上げた「ライブを超えたライブ」体験

『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸(さき)わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』

 1990年に華々しくデビューして以来、日本の音楽シーンにその名を刻み、圧倒的な才能で人々を魅了し続ける福山雅治。福山は2023年の夏に『言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』を開催。コロナ禍による影響から3年半ぶりにファンの声が会場に戻ったことで、30年を超えるキャリアの中でも特別なこのコンサートとなったこの公演を、福山自身が監督を務め映画化した。

 映画では40台以上のカメラが使用され、360°全方位からの撮影が行われた。日本武道館では初となる観客がアリーナに入っている状態でのドローン撮影も行われ、これまでにないハイクオリティな映像が収録されている。さらに、ドルビーアトモスの最高級の音響技術を用いて、細部に至るまで徹底的に音の表現を追求した。監督である福山がこの作品で目指したのは、ただのライブの再現映像ではなく、究極の「ライブを超えたライブ」体験を観客に提供することだった。そしてその指針は、本作のクリエイティブにおけるあらゆる側面に反映されている。

(左から)染谷和孝、嶋田美穂、三浦瑞生
(左から)染谷和孝、嶋田美穂、三浦瑞生

 今回の音響制作の取材会に際して、映像面での見どころについても、ドルビービジョンの仕上げを担当した株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービスのカラリスト・則兼智志が言葉を残している。則兼によると、『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸(さき)わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』の映像面の特徴は主に2つあるとのこと。

 1つ目はステージ上での表現とライブを演出する照明の見せ方、特に青色の表現・濃度だ。なおドルビーシネマ版では、ドルビービジョンの圧倒的なコントラスト比と豊かな色彩表現により、この点がより効果的に楽しめるそう。

 2つ目は、映像のフィルム感である。本作はライブの擬似体験とは異なる作品にするため、福山の希望によってフィルムライクな粒子感やハレーションにもこだわりが見られる作品に仕上がっている。ライブのシーンと劇中で挟まれるイメージ映像のシーンでは、フィルム感が異なることも明らかにした。

『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸(さき)わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』

 トークセッションが始まると、まずは今回のチーム制での作業の特色について染谷から説明が行われた。特に大きなAtmosプロジェクトの場合は音響制作チームの構築が必要になる。そのため今回の映画では、音楽のミックスは三浦が担当し、Atmos音響に関しては特別チームを構成して作業を共有して進めたそうだ。

 Atmos音響の作業を依頼された嶋田は「今回のAtmosはやらなければならないことが多いので、分担が鍵になりました。それぞれのエキスパートが集結していたのは幸運なことだと思います」「3人が音を聞くポイントが毎回違うんです。三浦さんですとそれぞれの楽器のライン、私だとノイズだけ聞いてる場合もあります。聴くポイントが違うことが作品のクオリティを格段にアップしているんじゃないか」とコメント。この点について「複雑な作業を分担することで、効率化に加えて、異なる視点から細かなチェックを行うことができることもメリット」だと染谷も頷く。

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