【聖地巡礼】『呪術廻戦』「渋谷事変」の場所を訪れて分かった想像以上の作り込みと再現度
地上と地下のつながりを活かした画作り
渋谷の街の特徴の一つに、地下が広がっていることが挙げられる。地下にホームがある東急田園都市線や東横線、東京メトロ半蔵門線、副都心線は電車に乗るまでに階段で深く潜らなければならない。そして、地上には地下への入り口が至る所に存在するのも特徴である。
五条が地下5階の駅のホームで封印された時、日下部とパンダは渋谷ストリームにいた。渋谷の土地勘がないパンダは五条は遠くにいると思っていたが、実際はそのまま下に降りればすぐに辿り着くことができた。
こうした地下と地上のつながりを活かしたバトルが、虎杖、釘崎と真人との戦いである。
道玄坂小路で真人の分身と遭遇した釘崎は、「共鳴り」で真人を追い込んだ。分身した真人は本体と入れ替わるため、釘崎から一度逃げようと試みる。ここで真人の入れ替わりを成功させてしまったのが、「地上から地下までのアクセスの良さ」であった。
道玄坂から109横にあるA0出口に入ると、そのまま地下1階109前の本体がいる場所まで走る。分身が釘崎から逃げる様子、本体が虎杖から逃げる様子の場面の切り替わりが絶妙で、そこから長い地下通路で合流し、カメラの前で入れ替わる描写も見事であった。
この結果、真人の後ろにいた虎杖と視聴者のみが入れ替わりに気づき、後からその場に辿り着いた釘崎だけが気づけないという最悪な状況を生み出したのだ。
実際に歩いてみると、A0出口から真人の本体と分身が合流するまでの道には曲がり角による死角が多く、通路はかなり長い距離であることがわかる。渋谷の地下と地上のつながりを活かして入れ替わりを成功させ、相手を追い込むトリッキーな手法に脱帽した。
宿儺によって更地にされた渋谷
ここまで渋谷のあちこちで行われた戦いについて綴ってきたが、これまでの戦いを全て覆すような、規格外の強さを見せたのが、宿儺である。
まずは漏瑚との一騎打ちによって、渋谷のビル群は破壊され、街は焼き尽くされた。常に非術師を意識して呪霊との戦いに臨んでいた呪術師に対し、宿儺と漏瑚は人間を一切気にしない(宿儺は1人を除く)。漏瑚は敵わないと分かっていながらも極ノ番「隕」を披露。渋谷ストリームの前に隕石を落とし街に絶大なインパクトを残したものの、宿儺には力が及ばず、敗れた。
次に宿儺は、伏黒が始めた「調伏の儀」に介入。伏黒の命を守るため、魔虚羅と戦うことになる。両者の戦いにより、建物はとことん切り刻まれていく。そして宿儺は「伏魔御廚子」を展開。斬撃によって半径140mにある建物を全て破壊し、人々を殺した。隙間なく建物が並んでいた渋谷を、更地へと変える。
この凄さを、一度でも渋谷に訪れたことのある人はよく分かるだろう。次々に新しく巨大なビルが建てられ、人々を見下ろすかのように並んでいる。渋谷にいると、高くそびえ立つビル群を前に、自分の非力さを感じることがある。
そんなビルを一瞬で切り刻み、破壊するほどの力を持つのが宿儺なのだ。日頃抱いていた圧迫感を吹き飛ばすほど、思い切り渋谷を壊していく宿儺の戦いは、もはや清々しかった。
変わり続ける渋谷の「今」を描いた渋谷事変
原作を読んだ時、アニメでここまで忠実に渋谷の街を描くとは思わなかった。日頃よく目にしている光景がそのまま再現されていたことから、トラウマを植え付けられたシーンもいくつかある。細部まで制作陣のこだわりを感じ、何度観ても新たな発見がある「渋谷事変」であった。
渋谷は今日もどこかで工事が行われていて、変わり続けている。作品に出てきた東急百貨店本店はもうないし、109のフォントは変わった。最近は「Shibuya Sakura Stage」ができた。これからも街は変わり続けるだろう。
「今」の渋谷を切り取った「渋谷事変」。今の渋谷をよく知っているからこそ、今このタイミングでアニメが放送され、目撃者となれたことを心から嬉しく思う。5年後、10年後に再び観た時、「渋谷事変」はどのように映るのだろうか。
※本記事は、2023年12月時点の情報を元に執筆しています。
■放送情報
TVアニメ『呪術廻戦』第2期
MBS/TBS系にて、毎週木曜23:56~放送
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、中村悠一、島﨑信長、櫻井孝宏、諏訪部順一、三瓶由布子
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史、小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
「渋谷事変」オープニングテーマ:King Gnu「SPECIALZ」(Sony Music Labels)
「渋谷事変」エンディングテーマ:羊文学「more than words」(F.C.L.S./Sony Music Labels)
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp