アナイス(ANAIS)の「2023年 年間ベストアニメTOP10」 日常/非日常の曖昧さを考える
5位:『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
本作は『ゲゲゲの鬼太郎(第6作目)』の前日譚の立ち位置だが、『墓場鬼太郎』(2008年)の第1話とも繋がる演出がとにかく圧巻で涙を誘った。どちらかといえばノイタミナ枠で放送されていた後者のおどろおどろしさの方が好みの自分としては、映画の中で映し出される醜悪な人間の業と第二次世界大戦を経験した者の記憶が大人向けに描かれていて大満足。子供思いなゲゲ郎と、知らない世界を拒絶ではなく“抱きしめる”水木の2人にいたく感動する。“日常”の中に潜む“非日常”、その境目が曖昧な『鬼太郎』シリーズが改めて大好きだと実感できた。
4位:『呪術廻戦』「懐玉・玉折/渋谷事変」
『呪術廻戦』第2期は、ファン目線抜きで語っても2023年の中で最も印象に残る作品の一つだ。原作に沿っているとはいえ、ところどころオリジナルの描写や動きがあり、アニメだからこそ補完できる情報の表現が素晴らしい。何より、参加された数多くのアニメーターの方々に対する敬意の持ち方について改めて考えさせられた。呪術師にとっても、非術師にとっても、もう“日常”には戻れない。そのきっかけを描いた「渋谷事変」はいわゆる“神作画回”が複数回にわたって存在し、間違いなく近年のアニメ史において重要かつ語られるべき章だと言えるだろう。
3位:『進撃の巨人』The Final Season完結編
一つの物語そして時代の完結を見届けた。そんな想いの中で感じたことは幾つもある。作者の諫山創が希望して書き換えられたアルミンの語りも素晴らしく、特に世界の各地で紛争が起こり続けている今だからこそ作品の持つメッセージを強く受け取ることができた。人類が“日常”を過ごす上で忘れてはいけないことを、何度でも思い出させてくれる。
『進撃の巨人』のメッセージを解説 エレンとアルミン、ミカサが辿り着いた結末の意味とは
10年間、映像で紡がれてきた『進撃の巨人』の幕が閉じた。突如現れた巨人によって存続が危ぶまれる人類。生き残った人々は壁の中に住ん…
2位:『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
“スパイダーマン”とは何か。“スパイダーマン”でいることは何を意味するのか。長く知ってきたはずの大好きなヒーローが背負う宿命を、改めて高校生のマイルズ・モラレスの肩越しに観た作品だ。壊れた蛇口から溢れて止まらないような情報量と、その中で光るマイルズとグウェン・ステイシーのエモーショナルな物語が最高。音楽も最高。本作もまた、主人公が“日常”に別れを告げるような作品だった。
1位:『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』
タートルズは私の心の中の特別な場所にいつもいて、ピザを食べている。彼らが普通の高校生らしい“日常”を望んでヒーローになる物語も、分断ではなく結束を選んだキャラクターたちも、超いま的な感覚のジョークやリファレンスも、子供の落書きのようなタッチと抜群の色彩感覚で使われるブラシ感も、本作の何もかもが愛おしい! 音楽も最高!