松本潤の徳川家康は大河ドラマ史に刻まれた 『どうする家康』すべての思いが繋がる最終回

 翌年、江戸は活気に満ちあふれる。僧・南光坊天海(小栗旬)は家康の偉業を称え、家康は全ての武家の憧れとして「神の君」と呼ばれるようになった。しかし当の家康は病に倒れ、誰もが家康を畏れるために、孤独な時間を過ごしている。「お幸せだったのでございましょうか……」と呟く阿茶(松本若菜)の不安げな声色が切なかった。おおらかな於愛(広瀬アリス)とはまた違う形で、阿茶は家康を支えてきた。数々の戦にも同行し、側室にして同志ともいえる阿茶だからこそ、家康に最期の時が近づくにつれ、ぐっと不安が押し寄せてきたのだろう。

 家康は幸せだったのか。人生の幕引きが近づき、家康は瀬名、信康と再会する。

「やってきたことは……」
「ただの人殺しじゃ」
「あの金色の具足を着けたその日から、望んでしたことは一つもない……」
「望まぬことばかりを……したくもないことばかりをして……」

 物悲しい瞳で呟く家康に心が苦しくなる。けれど、幼き竹千代(後の徳川家光/潤浩)には家康の真の姿が見えているかもしれない。絵を描くのが好きな家光が描いたのは白兎だ。家康はありし日のことを思い出す。

 豊臣との戦の前、阿茶が聞きたいと言った鯉のお話。家康のことを信じ、忠義を尽くして支え続けた家臣たちとの日々。家臣たちに心から感謝し、深々と頭を下げる家康に、瀬名の声が優しく響く。

「お幸せでございますな、殿」

 夢を見ているかのように穏やかな表情で、家康は息を引き取った。皆が笑い合い、賑やかな日々を過ごす、そんな安寧の世の礎を作り上げた人物の物語が幕を閉じた。

■配信情報
『どうする家康』
NHKオンデマンド、NHK+にて配信中
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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