『たとえあなたを忘れても』最終話直前に壮絶な展開 ラストの空の姿に思わずゾッとする

 心臓が止まるかと思った。日曜の夜にこんなどんでん返しが用意されていたとは、誰も思わなかっただろう。これまでも繊細な登場人物の心情を丁寧に描きつつ、絶妙な脚本の構成で視聴者の予想を裏切る展開を見せてきた『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)。来週最終回を迎える本作だが、第8話はまさにクライマックスに相応しい、壮絶な展開が繰り広げられることに。

 ある朝、いつものようにキッチンカーにやってきた美璃(堀田真由)は、空(萩原利久)から突然、「おはようございます、何にしますか?」と他人行儀な笑顔と言葉を向けられる。「空、私のこと覚えてないの?」と動揺した美璃は、2人を繋ぐ“メモ”を探すも、壁には空の名前が書かれた付箋のみがポツンと残っているだけだった。車内の壁一面に貼られていた、2人の思い出の写真もない。残酷なことに、空は再び記憶を失くしていた。

 恐れていたことが起きたショックのあまり、一日中家にこもっていた美璃の部屋に、空の異変を知った茜(畑芽育)が訪ねてくる。「私、空が記憶を失くしても、何度でもやり直すつもりでいたの」と力なく今の気持ちを語る美璃に、茜は“最悪シュミレーション”について話をする。いまこの状況で美璃にとっての“最悪”は空が死ぬこと。でも空は生きている。障害を抱えてこの先も生きていく空と付き合うかどうかは、美璃次第だと語る茜の言葉は、自身が記憶障害の残酷さを理解しているからこその、寂しくも強い響きを纏っていた。

 その後、勇気を振り絞って空のキッチンカーに赴き、「私は、河野美璃と申します。あなたとお付き合いしてました」と自己紹介をした美璃。恋人に戻るのは難しくても、従業員として働くと宣言するが、『これで勘弁してください、やっぱり1人の方が気楽だし』と、空に拒絶されてしまう。考え込むような不安そうな瞳、周囲の人に対して怯えるような動作……ここまで幾度となく記憶を失くしてきた空を見て、視聴者も彼の様子から記憶の有無が判別できるようになりつつあるに違いない。萩原利久の秀逸な記憶喪失の演技が生む、空の“変化”は、第7話との比較でより一層際立つようにも見えた。

 そんな空を安心させるように、「大丈夫やで」と声をかけたのは沙菜(岡田結実)だった。沙菜が美璃に対してかけた「いい思い出いっぱいつくったんやな、羨ましいわ」という言葉は胸にくるものがある一方で、美璃のメモの代わりに沙菜のプロフィールが書かれた紙が並ぶことになる流れも切ない。

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