宮﨑あおいの“ヒロイン力”が全開! 船上デート気分を味わえる『クレイジークルーズ』

 吉沢亮と宮﨑あおいのダブル主演Netflix映画『クレイジークルーズ』が、11月16日より配信中だ。

 脚本を手掛けたのは、数々の名作ドラマを生み出してきた坂元裕二。今年5月にはカンヌ国際映画祭にて映画『怪物』で脚本賞を受賞するなど、映画脚本における活躍も目覚ましい。そしてダブル主演の吉沢亮と宮﨑あおいは、両者ともに実力派の“NHK大河主演俳優”であることからも演技力への信頼度が高い。

 そんな豪華タッグで送られる本作は、豪華客船での殺人事件を発端とするミステリ要素と、“主人公”になれない“脇役”にあえてスポットを当てたラブコメ要素が掛け合わされた、いわゆる“スクリューボールコメディ”のエンターテインメント作品となっている。

 本稿では宮﨑あおいの演技の魅力について、特に本作で輝いた“ラブコメ”部分に注目しながら深堀りしていきたい。

 ここ数年、出産・育児により俳優活動をセーブしてきた宮﨑あおい。映画主演作は石川寛監督作『ペタル ダンス』以来、約10年ぶり。さらに“ラブコメ”ジャンルにおける宮﨑あおいの演技を観ることができるのも久しぶりだ。

 そんな宮﨑あおいだが、その演技のレベルの高さは相変わらずである。

 ダブル主演の吉沢亮も、中学生の頃に観てからずっと宮﨑あおいが好きだと語る(オリコン公式YouTubeチャンネル)恋愛映画『ただ、君を愛してる』(2006年)。その主演で見せた愛らしい演技を思い起こさせる、昔からの拗ねたような表情やいたずらっぽい笑顔の魅力も健在だ。(※1)

 また宮藤官九郎監督・脚本のコメディ映画『少年メリケンサック』(2008年)などで培ったコミカルな演技も、コメディ要素の強い本作の中で披露されている。

 『クレイジークルーズ』は、坂元裕二が“普遍的なラブコメ”を描いた作品ということもあり、宮﨑あおいの“ラブコメ演技”はその集大成とも言うべきクオリティの高さを誇る。

 物語の“脇役”タイプの真面目なバトラーの冲方優(吉沢亮)と正義感の強い盤若千弦(宮﨑あおい)は、いわゆる“主人公”タイプであるそれぞれの恋人同士に浮気されてしまう。しかし浮気をしている“主人公”たちのような刺激はなくとも、2人の“良い人”同士のほっとするような微笑ましいやりとりに思わず笑みが浮かんでしまうはず。

 坂元裕二が描いた“普遍的なラブコメ”に、かつて主演を務めたNHK連続テレビ小説『純情きらり』で日本中を虜にした宮﨑あおいの清純さがマッチし、視聴者に初恋のときめきを思い出させてくれる。影のシーンや終盤のロマンティックなシーンは、2人のかわいさに“きゅんきゅん”必至だ。

 そして今作における宮﨑の演技で特に印象的なのはやはり、予告編でも度々使われ、坂元裕二もイベントで挙げていた、夜のプールでのシーンだろう。

 吉沢演じる冲方が、恋人が浮気している事実を知った失意のあまりプールに落下し、それに続いて宮﨑演じる盤若も一緒にプールに飛び込む。そこで宮﨑あおいが振り返り笑いながら「夜はやっぱり冷たいね」と言うのだが、その演技が自然かつ魅力的で彼女の愛らしさが炸裂し胸に刺さった。

 それまでお互いに敬語で会話していた冲方と盤若だが、ここで初めて盤若がタメ口で冲方に話しかけるのだ。宮﨑は登場からここまでの前半は抑えた演技をしていたように思えるが、このシーンで突然爆発的な魅力を発散させる。

 映画の配信記念イベントにおいて宮﨑も、この場面を「2人の関係が変わるシーン」だと語っており、計算された演技の配分だとうかがえる。(※2)

 また実際に、初共演の宮﨑と吉沢は現場でお互いに緊張し合っていたらしいが、このプールのシーンの撮影では打ち解けた空気になれたと語っている。(※3)このシーンでの宮﨑のまるでアドリブかのような“素”の魅力、生っぽさは他に類を見ないものがある。

 宮﨑あおいの演技の類まれなるナチュラルさは、一体どこからくるのだろうか。

関連記事