『ブギウギ』は草彅剛がいる限り“安心”だ 音楽家・羽鳥善一が信じるスズ子の特別な力

 羽鳥視点で見ると、自分の理想とする音楽を作りあげるために、スズ子を誘導している気もする。「大空の弟」の哀しみから、「ラッパと娘」で弾ける流れは、カタルシスーー浄化の理想の形であり、最高の音楽ができた瞬間として、音楽家としてはかなり満足の出来であったろう。その結果、スズ子の心も、梅吉の心も、誰の心も整った。

 羽鳥は具体的なことは言わないけれど、自然に、スズ子を導いていく。ツヤ(水川あさみ)が危篤のときも、公演に出ないで実家に戻ることも止めないと言いながら、「むしろ自分の苦しい心持ちを味方にしていつもよりいい歌だといわれるくらいじゃないと僕はダメだと思う」と言って(第38話)、スズ子に、ステージをやり切る決断を促した。

 今回の「大空の弟」はまさに、自分の苦しい心持ちを味方にしていい歌だと思わせた成果である。歌い終わったあと、がくりと膝をついて泣き崩れそうになったスズ子に羽鳥は、「福来くん、しっかりしなさい」と声をかける。ステージに上がったら、感情はパフォーマンスに込めないといけないのだ。立ち上がったスズ子の「ラッパと娘」は最高にはじけていた。こんなふうに、どんなときでも、背後にいて、スズ子を導いているのである。まさに指揮者。そして、メンター。

 朝ドラでは、ヒロインのメンターになる人物がよく出てくる。古くは『おしん』でいうと中村雅俊が演じた脱走兵・俊作、近年だと『半分、青い。』で豊川悦司が演じた人気漫画家・秋風羽織、『あさが来た』でディーン・フジオカが演じた実業家・五代友厚、『とと姉ちゃん』で唐沢寿明が演じた伝説の編集者・花山伊佐治などが、絶大な人気を誇ったメンターであろう。

 いいメンターのいる朝ドラは名作になる。羽鳥善一がいる限り、スズ子も、『ブギウギ』も安心だ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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