『呪術廻戦』虎杖は“罪”を背負い真人と戦う “師匠”東堂との絶妙なコンビネーション

 真人の攻撃で致命傷を受けた釘崎野薔薇の姿を見て、絶望に打ちひしがれる虎杖悠仁。もう万事休すかと思われた矢先、思いもよらぬ救世主が現れる。『呪術廻戦』第44話「理非-参-」では、虎杖と真人の信念がぶつかり合う。

 クリフハンガーとなっていた釘崎の最期。冒頭では虎杖、伏黒恵、釘崎の通称“1年ズ”のメンバーが五条悟の高級なYシャツにコーヒーをこぼしてしまい、なんとかシミを消そうと奮闘する微笑ましい日常が描かれた。五条にバレまいと胸元にYシャツを隠す伏黒と、それを見て笑い合う虎杖と釘崎の3ショットはこのタイミングだからこそ胸に来るものがある。そして、その日常の描写が終わると、映し出されるのは左目が大きな損傷を受けて倒れている釘崎。この対比によって釘崎の最期がより強調されているのが痛ましい。

『呪術廻戦』虎杖悠仁×釘崎野薔薇×伏黒恵 “1年ズ”の思い出を今だから振り返りたい

アニメ『呪術廻戦』第2期の雰囲気が、第1期と全然違う。それは作画どうこうの話ではなく、あんなに平和に野球をしていた者たちと世界が…

 宿儺による無差別な殺人と七海建人の死に続き、親友でもあり良きライバルでもある釘崎の姿は、虎杖にとって受け入れがたいものだった。そんな虎杖の感情をアニメではとても丁寧に描いていた。

 例えば、原作では虎杖の感情を第三者の言葉でもって表現していたが、アニメでは虎杖を演じる榎木淳弥のセリフや息遣いといった芝居だけで虎杖が直面している絶望を想像させていた。想像の余地があるアニメならではの演出がいい。さらに、真人はそんな虎杖に追い打ちをかけるように黒閃を食らわせる。プラン通りの展開に真人は「甘ぇんだよクソガキが!! これは戦争なんだよ!! 間違いを正す戦いじゃねぇ!! 正しさの押しつけ合いさ!! ペラッペラの正義のな!!」と容赦ない言葉を浴びせる。真人役の島﨑信長のこのシーンのセリフには狂気さえ感じた。

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり……」

 絶妙な明るいBGMとともに登場したのは東堂葵。「渋谷事変」ではめっきり登場シーンが少なかったが、呪術高専京都校の3年生で1級呪術師の実力者だ。虎杖とは「京都姉妹校交流会」で花御相手に対峙しており、その際に虎杖に黒閃を発動させるための心構えを伝授している。七海建人が虎杖にとって精神的な支えであるのならば、東堂は戦闘の仕方を教えた師匠のような存在だ。それは東堂の「ブラザー」という言葉にも表れている。「俺たちの戦いはこれからだ!!」と威勢を放つ東堂に対して、虎杖は「俺はもう俺を許せない」と弱音を吐く。だが、東堂は「俺たちが生きている限り、死んでいった仲間たちが真に敗北することはない!!」と説くと、虎杖は自分が犯してきた罪を背負い、前に進むことを決意する。その背後には七海の姿があった。

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