『いちばんすきな花』4人と美鳥の“答え合わせ” “嫌いなポジティブワード“と言葉の奥深さ

 「聞くだけでちょっと熱が出る」というほどがあるのかと首を捻ってしまうけれど、つい自分にとってのソレを探さずにはいられない“嫌いなポジティブワード“発表会。「他人は変えられないけど、自分は変えられる」「死ぬ気で頑張れ。死なないから」「生まれ変わったら、あなたになりたい」「止まない雨はないし」……。

 その言葉単体で聞けば悪いものではない。けれど、なぜか「あ〜」となってしまうのは、誰もが一度は“今そう言われてもポジティブにはなれないよ“と思うタイミングで、言われた経験があるからではないだろうか。

 木曜劇場『いちばんすきな花』(フジテレビ系)第8話は、ゆくえ(多部未華子)、椿(松下洸平)、夜々(今田美桜)、紅葉(神尾楓珠)がそれぞれ見てきた、志木美鳥(田中麗奈)についての答え合わせの回に。そして記憶のピースを集めていくと見えてきたのは「みんなに嫌われていた美鳥ちゃん」だった。

 親との折り合いが悪く親戚をたらい回しにされていた美鳥は、いつも顔や体に怪我をして、その理由を「ケンカ」だと言い張っていた。実際には「ケンカ」というにはあまりにも一方的な暴力のようだったが、幼い同級生は「みんな」その「ケンカ」という言葉をそのまま信じた。

 そして、恥ずかしながら筆者も、椿が話す中学時代の情報を聞いて、美鳥が親に反発して荒れていたのかと思ってしまった。それは円すいを側面から見て「三角だ」と言い張ったり、底から見上げて「丸だ」と信じ込むような、乱暴な解釈なのだとハッとさせられる。

 そんな美鳥に寄り添うことができたのは、むしろ「みんな」として全体に溶け込むのが苦手なあの4人だった。個性を抑えて、余計なことは言わず、相槌ばかりを打つ“いい子“になっていた椿は、複雑な事情を抱える美鳥に詮索することもしない。ましてや、無理にポジティブになるような言葉を掛けたりすることも。その温度感が美鳥にとってどれほど安心できるものだっただろうか。

 また、夜々が美鳥との思い出として語る将棋や「ママよりママの味」と絶賛する料理が、実は椿家で教わっていたものだという繋がりにもまたグッとくるものがあった。美鳥が教えてくれた将棋は、夜々が「女の子だから」と禁止されていた遊び。過干渉気味な夜々の母親に息苦しさを覚えながらも、どうしていいかわからなかった夜々にとって「ママには内緒」が成立する時間がどれだけ心が軽くなっただろうか。

 椿が抱えていた苦悩があったからこそ美鳥を安堵させることができたし、美鳥が背負う影があったからこそ夜々に新しい光を見せることができた。人生は無傷であるに越したことはないけれど、自分が傷を負ったからこそつながっていくものもあるのだというひとつの希望を見せてもらったようにも思う。

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