『プリンセスと魔法のキス』ディズニー初の要素が盛りだくさん 物語を彩るジャズにも注目

初要素満載の『プリンセスと魔法のキス』

物語を彩るジャズのリズム

 『プリンセスと魔法のキス』を語るうえで、もう1つ欠かせないのが音楽だ。ジャズ発祥の地ニューオーリンズを舞台としたミュージカルである本作では、ジャズはもちろん、ブルースやゴスペルなどの、いわゆる黒人音楽調の楽曲が散りばめられている。オープニングとラストシーンで歌われる「それがニューオーリンズ」と、レストラン開業にあと1歩まで迫ったティアナの高揚感が感じられる「夢まで あとすこし」は、アカデミー賞主題歌賞にもノミネートされた。どちらも陽気なジャズの旋律が印象的な曲だ。また、ナヴィーン王子とティアナが人間に戻してもらうために会いに行ったブードゥー教の尼僧ママ・オーディが歌う「もう一度考えて」は、ゴスペル調のリズムが楽しい名曲となっている。

 本作で音楽を担当したのは、『トイ・ストーリー』シリーズをはじめ、数多くのピクサー作品に携わってきたランディ・ニューマン。1970年代からシンガーソングライターとして活躍した彼は、1980年代以降、映画音楽を多く手掛けるようになり、2001年に公開された『モンスターズ・インク』の主題歌「君がいないと」では、アカデミー賞歌曲賞を受賞している。そんなニューマンにとって、『プリンセスと魔法のキス』の舞台となっているニューオーリンズは、母の実家がある馴染み深い場所のようだ。そうした環境でその地の音楽からも影響を受けたであろうニューマンが作り上げた楽曲は、ジャズやゴスペルなどの要素をうまく取り入れた、魅力あふれるものとなっている。

 夢に向かってひたむきにがんばるティアナと、遊んで暮らしたいと思っているナヴィーン王子。お互いに相容れない2人は、ともにカエルに姿を変えられてしまい、人間に戻るために協力することになる。彼女たちの冒険は軽快なジャズのリズムに彩られ、「夢を叶えること」と同時に、「本当に大切なこと」にも目を向けさせてくれる。今となっては貴重なディズニーの2D手書き長編アニメ映画でもある本作は、ストーリーの面でも音楽の面でも見逃せない作品だ。今回『金曜ロードショー』では、本編ノーカットで放送されるので、ぜひそのキャラクターや音楽の魅力を堪能してほしい。

■放送情報
『プリンセスと魔法のキス』
日本テレビ系にて、12月1日(金)21:00~22:54放送
※本編ノーカット
監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ
製作:ピーター・デル・ヴェッコ
製作総指揮:ジョン・ラセター
脚本:ロブ・エドワーズ、ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ
美術監督:イアン・グッディング
音楽:ランディ・ニューマン
声の出演:鈴木ほのか(アニカ・ノニ・ローズ)、丹宗立峰(ブルーノ・カンポス)、安崎求(キース・デヴィッド)、荒井洸子(ジェニファー・ルイス)、玄田哲章(ジョン・グッドマン)、駒田一(ジム・カミングス)、小林アトム(マイケル=レオン・ウーリー)、三上市朗(テレンス・ハワード)、杉村理加(オプラ・ウィンフリー)
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