『きのう何食べた?』が描く“人生”のリアル シロさんの「恋人です」に胸が熱くなる 

 人気漫画家・よしながふみの同名コミックが原作のドラマ『きのう何食べた? season2』(テレビ東京)。第6話では、西島秀俊演じる筧史朗(以下、シロさん)と内野聖陽演じる矢吹賢二(以下、ケンジ)が、小日向(山本耕史)と航(磯村勇斗)とともに新年を迎える。

 第6話では度々、絶妙に気まずい時間が流れる。シロさんやケンジ、小日向や航が感じ取ったであろうなんともいえない空気は妙にリアルで、人生のすべてが明るく楽しい出来事ばかりではないという現実を考えさせられる。その一方で、物語終盤に起きた気まずい状況でシロさんが言ったある言葉は、家族や結婚といった話題と向き合ってきたシロさんの変化を表すものでもあった。

 新年を迎え、テンション高めのケンジはこのまま夜遊びを満喫しようとするのだが、シロさん、小日向、航の3人はすっかり帰りたいモードになっていた。ケンジは駄々をこねるが、その場は一旦解散となる。小日向の提案で、昼頃に再び集まった4人は、ニューイヤーパーティーを楽しむことになった。

 小日向が用意した高級おせちとシロさんが持ち寄ったおかずの味についてのくだりはなかなか気まずい。シロさんのおかずが高級料亭の味と遜色ないのは、料理好きなシロさんがとことん料理に向き合ってきたことの賜物だ。とはいえ、航を喜ばせたい一心で行動する小日向の複雑な心境もわからなくはない。空笑いしつつ「縁起物だからいいんですよ。自分で作るのは面倒だしね」と言う小日向の姿がどことなく切ない。

 ばつが悪い思いをしたのは小日向だけではない。実家や兄弟姉妹の話題が出た時、小日向、航、ケンジと盛り上がりが続いた後、シロさんのこわばった表情が映し出される。兄弟姉妹がいようといまいと、親の跡を継ぐことや結婚する・しない、子どもをつくる・つくらないといった選択は、個々人が決めることであり、親の期待を背負う必要はない。それでも唯一一人っ子のシロさんからは、共通の話題がないということ以上の居心地の悪さが感じられた。そんなシロさんに、航がこんな言葉をかける。

「いいじゃない。過保護な親から超期待されて育って、ゲイバレしてからこじれにこじれた一人っ子も、なんとかこうして生きてんじゃん」

 航の物言いには遠慮がない。ひねくれ者の航らしい労いの言葉なのだが、その言葉の無遠慮さが複雑な気持ちを抱えたシロさんに追い打ちをかけていた。あっけにとられるシロさんにケンジが心配そうに声をかけると、シロさんは「全部事実だからいいんだけどさ、ジルベールに言われるとな」と口にする。

 小日向のフォローにシロさんはすかさず「わかってます」と返すが、その声は小憎たらしい航への苛立ちを抑えるように震えている。シロさんには申し訳ないが、このやりとりが面白かった。航はニューイヤーパーティーを毎年恒例にしようと提案するが、「どうせみんな家族と縁の薄いゲイ同士なんだし」という航の言葉に、その場の空気がやや凍てついた。航に悪気はないし、毒舌な航の本心は、気心知れた4人で年末年始を一緒に過ごしたいという素直なものだろう。そうは言いつつも、家族との関係は人によって違うものだ。航の言葉にいまいち乗れないシロさんとケンジの胸中はなんとなくわかる。

 小日向が何気なく言った言葉も心に残った。

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