アイナ・ジ・エンドが語る、BiSH解散後の“居場所” 「自分で見つけていくのが人生」

アイナ・ジ・エンドの活動を通して“失い続けてきたもの”

ーー本作に登場する人物の多くは何かしらを喪失していたり、そもそも居場所がないような人々です。アイナさんは大阪から上京して、アーティストとして多くの活躍をしていくなかで、得たものもたくさんあると思うのですが、一方で、失ったもの、失い続けてきたものはありますか?

アイナ:顔が見えない相手にやんややんや言われるようにはなったな、と思います。BiSHになってなかったら、例えば普通の友達関係で私のことが嫌いな人やつが悪口を言うコミュニティがあって、それが友達伝いで耳に入ってくる、みたいな人生だったと思うんです。けど、今はもう何の気なしに生きてても、たまたまエゴサしたときに「死ね」って書かれてたりするんで、「そうなんや」みたいな、「別にこの人に悪いことしてへんのにな」みたいなふうには思っている。そういうところが、失うというか、言われるようになったなと思います。

ーー一方的な悪口に巻き込まれるというか。

アイナ:そうですね。でも思うんですけど、その人たちって例えば私が死んだら、多分めっちゃ後悔すると思います。「うわ、私の一言で相手を殺しちゃった」みたいな。

ーー近年、この事例が多いですよね。

アイナ:マジ人生もったいなくないですか。言わん方がいいと思うんですよね、「死ね」とか(笑)。それを言われてほんまに人は死ぬと思うんで。だからいつも思います、そうやって書かれたときに、「後悔するからやめとき、ほんまに人は死ぬんやで」って。

ーー『キリエのうた』でも言葉の扱い方は印象に残っています。アイナさんから見た本作の魅力を教えてください。

アイナ:私、岩井俊二監督がめっちゃ好きなんですよ。岩井俊二さんファンの方って、めっちゃ地道に物語を計算して「あの小道具の真相は〜」とか、そういうふうに観る方もいらっしゃると思うんですけど、特にそういう人には『キリエのうた』は何回も観てほしいなと思います。1回観ただけでは全てを掴みきれない不思議なものが宿っているので。そういう意味でも、コアなファンの方に何度も観てほしいなと思うし、その人の考察を聞いて自分も新たな映画の見方を得たいなと思ったりしています。

ーーもともと岩井監督の作品が好きだったというところで、今回は自分が出演することになりましたね。

アイナ:まだ全然客観的に観れなくて、やっぱ正直、「うわもう、めっちゃ下手、ほんまにいや……」みたいなことばっかりで。反省というか「もっとこうできたのに……」とかばっかり思ってしまう。

ーーそれでも、アイナさんの言葉を借りれば“伸び始めている”ように思います。お芝居をすることについて、今はどのように捉えているのでしょうか?

アイナ:私にとっては広瀬すずちゃんと松村北斗さんが割とずっと一緒にいてくれたので、お2人がお芝居の教科書みたいになっていて。なのでお2人みたいに、どんな環境に放り込まれても、堂々としてたいなって思います。2人はずっと堂々としてたんですよ。日和らなかったんですよ、どんなときも。そうなりたいなって思います、自分も。日和らない!(決めポーズ)。

■公開情報
『キリエのうた』
全国公開中
原作・脚本・監督 :岩井俊二『キリエのうた』(文春文庫刊)
出演:アイナ・ジ・エンド、松村北斗、黒木華、広瀬すず、村上虹郎、松浦祐也、笠原秀幸、粗品(霜降り明星)、矢山花、七尾旅人、ロバート キャンベル、大塚愛、安藤裕子、鈴木慶一、水越けいこ、江口洋介、吉瀬美智子、樋口真嗣、奥菜恵、浅田美代子、石井竜也、豊原功補、松本まりか、北村有起哉
企画・プロデュース:紀伊宗之
音楽:小林武史
主題歌:「キリエ・憐れみの讃歌」Kyrie(avex trax)
製作プロダクション:ロックウェルアイズ
配給:東映
©︎2023 Kyrie Film Band
公式サイト:https://kyrie-movie.com/

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