『トクメイ!』橋本環奈の顔芸に頬がゆるみっぱなし 緊張と弛緩を行き来する作風に

 第3話は物語の脈絡よりも、演技の諧謔とテンションで終始頬がゆるみっぱなしだった。橋本環奈の顔芸と周囲のズッコケ具合がちょうどよい具合にはまって、本作が意図しているところのおかしみが自然と伝わってくるようだった。徳重聡演じる中西刑事のキャラ設定が生かされたかと思えば、毎回見せ場がある湯川のちょっと良い話や、オチが絶縁シャツという脱力ぶりまで、高尚さや難解さを狙うのではなく、遠赤外線のように見終わってくつろいだ気持ちになれるのが本作かもしれない。

 冒頭で引用したのは、一円が出演交渉をした際の口説き文句であるが、主演の橋本にそのまま当てはまるのが面白い。福岡出身の橋本は2017年に福岡中央署の一日署長を務めたが、この年、『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)で初の連ドラヒロインに抜てきされると、女優として活動の幅を広げながら、本作で刑事ドラマの主演をつかんだ。

 劇中の台詞を主演自ら体現したように、ネタ感満載の第3話はリアルに裏付けられている。前年比で経費を削減できたのは、ギャラが中塚副署長(鶴見辰吾)の身内価格だったからではとツッコむのはやめておこう。この展開で、まさか警察組織の巨悪が控えているとは想像しにくいけれど、脅迫者Xのくだりも生きていて、弛緩しきった空気をどう緊張へ引き戻すか、シリアスへの振れ幅にも注目したい。

■放送情報
『トクメイ!警視庁特別会計係』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:橋本環奈、沢村一樹、松本まりか、JP、前田拳太郎、徳重聡、佐藤二朗ほか
脚本:荒木哉仁、皐月彩
演出:城宝秀則、光野道夫、湯浅真
プロデューサー:近藤匡、小林宙
音楽:大友良英
主題歌:SEVENTEEN「今 -明日 世界が終わっても-」(HYBE JAPAN)
オープニングテーマ:LEEVELLES 「地獄の沙汰も愛次第」(ユニバーサルミュージック/Virgin Music)
制作著作:カンテレ、共同テレビジョン
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/tokumei/
公式X(旧Twitter):@tokumei_ktv

関連記事