『いちばんすきな花』“席”が示すそれぞれの居場所 “4人組”として繋がっていくゆくえたち

 教室の席。結婚式の席。ダイニングテーブルの席。それは単なる椅子かもしれない。だが、「ここだよ」と示される席があるというのは、「あなたの場所はここだよ」と言ってもらうのと同じことなのかもしれない。木曜劇場『いちばんすきな花』(フジテレビ系)第2話は、そんな「席」がひとつのテーマになっていた。

 もう2度と会わない間柄だと思ったからこそ、2人組になることが苦手なそれぞれの苦悩を語り合うことができた、ゆくえ(多部未華子)、紅葉(神尾楓珠)、椿(松下洸平)、夜々(今田美桜)の4人。逃げ出すようにして解散した直後は、それぞれの古傷がヒリヒリと痛んだものの、生きづらい日常に戻ると少しずつあの時間の心地よさを思い出すのだった。

 日常とは、例えば同窓会。ゆくえは、小学校の同窓会に参加したものの、仲良し4人グループだった友人たちから自分だけ結婚式に呼ばれていなかったことを知る。もちろんショックだったけれど、その場の空気を壊したくない一心で愛想笑いを振りまいてしまう。もともと同窓会を楽しめるとは思っていなかった。けれど、欠席したらしたで今度は他人の感情を想像してしまうのは目に見えていた。元来、行っても行かなくても傷ついてしまう性格なのだ。大人の言うことを聞いて「頭のいい人」を頑張ってきたゆくえ。だが、愛想笑いをするほどに、なぜか人との距離ができてしまう難しさに頭を悩ませていた。

 そして、紅葉はアルバイト先のコンビニのロッカーで、後輩たちに「調子のいい人」と陰で言われているのを聞いてしまう。イラストを褒めておけば、いつでもシフトを代わってくれる便利な人とまで言われても、紅葉は彼らを咎めることはできない。むしろ、彼らが気まずくならないように、わざわざ足音を立ててから忘れたスマホを取りに行くまで気を遣う。人に嫌な思いをさせまいとするほど、自分が嫌な思いをしなければならなくなる。それが、紅葉の気遣いの結果になってしまっているのだ。

 また、椿は実家に戻り、母と弟に婚約者との結婚が破談になったことを伝えていた。だが、その最中に職場からの電話が鳴る。有給休暇中であるにもかかわらず、次々と仕事の対応を任される椿を見て、弟の楓(一ノ瀬颯)は「“都合のいい人”認定されちゃってるんだろうな」とつぶやくのだった。椿の受け入れ力が、周囲の人間をどんどん無遠慮にしてしまう現実。結婚をしなくなったという報告にも大きく驚くことなく察していた2人を見ると、きっとそんな椿をずっと見てきたのだろう。

 一方、夜々(今田美桜)は友人の結婚式に出席していた。新婦の手紙に思わず涙ぐんだ夜々だったが、友人たちからは「演技がうまい」と言われてしまう。興ざめをしている友人たちに、素直に感動したことを言えず、話を合わせるしかない夜々。そうして嫌われまいとするほどに、本来の夜々とは別の人物像が彼女たちに浸透していくのだった。さらに、自宅に帰ると友達以上を期待してきた相良(泉澤祐希)の姿が。とっさに逃げ出すと、相良に「顔だけいい人」と言われてしまう。

 「頭がいい人」「調子のいい人」「都合のいい人」「顔がいい人」……気づかぬうちに座ることになっていた、4人の「そういう人」という人間関係の“席”。誰もが自分の望む形の席を確立することができれば幸せなのだけれど、多かれ少なかれ生きていれば、そんな居心地の悪い席を用意されてしまうことがある。そして、一度座ってしまうと立ち上がって別の席に移動することは、なかなか難しい。

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