朝ドラ『ブギウギ』が提示するエンタメの力 リアリティの中にある“寓話”の不思議な味わい

 朝ドラことNHK連続テレビ小説『ブギウギ』、第2週「笑う門には福来る」では、花田鈴子(澤井梨丘)が梅丸少女歌劇団(USK)の劇団員・福来スズ子(趣里)になるまでの6年間がなめらかなメロディのように、あるいは、するするとのどごしのいい流しそうめんのような筆致で描かれた。

 鈴子はUSKに研究生として入団、厳しい修業がはじまる。稽古だけではなく掃除や洗濯や、裏の仕事も任されて、休む間もない。最初は何人もいた同期が、どんどん減って、桜庭辰美(木村湖音)と白川幸子(小南希良梨)の3人になってしまう。この3人の仲がいまひとつ。

 家の仕事もしながら研究生活動もしていて、余裕のない辰美と、裕福な乾物屋の娘でのんびりした幸子のテンションがあまりに違ってギスギスする。間に入った鈴子も、両親になに不自由なく育てられ、世間知らずのため、おせっかいをして火に油を注いでしまう。

 鈴子のおせっかいエピソードは、ヒロイン鈴子が世の中にはいろんな人がいること、自分は恵まれていることを知ることが、このあとの彼女の人生に影響を与えるという寸法であろう。さらに、彼女がいかに恵まれているか、とくに両親・ツヤ(水川あさみ)と梅吉(柳葉敏郎)のあふれんばかりの愛情は並なものではないことが強調される。決して経済的に余裕があるわけではないと思うのだが、できるかぎりのことを子供にしてやろうとしているし、なにより愛情がある。

 鈴子が倒れ、百日咳疑惑が持ち上がったとき、ツヤは感染ることを厭わず、つきっきりで看病し、梅吉は感染ることをおそれながらも廊下にずっと座って鈴子を心配する。過去に息子をひとり亡くしているからということもあるだろう。が、そこには何か別の理由が見え隠れする。アホのおっちゃん(岡部たかし)が六郎(又野暁仁)に鈴子とはほんとうのきょうだいではないと吹き込み、六郎はさっそく鈴子にしゃべってしまう。ぴりっとなるツヤと梅吉だが、おっちゃん流の「カッパの子」と「クジラの子」というある種ソフィスティケートされた言い方でことなきを得る。

 『ブギウギ』の第2週は不思議な味わいのある週で、このように、ほんとうのきょうだいではないことを子供に生々しく語らず、カッパの子とクジラの子という比喩にしている点と、その後、病気の鈴子に季節外れの桃を食べさせたいとツヤが探し歩いたすえ、どこにも売っていなくて落胆すると、ゴンベエ(宇野祥平)がどこからともなく手にいれた桃を差し出すエピソード。実話ベースのリアリティある物語のはずが、ここだけ、理屈で説明しにくい寓話のようになっているのはなぜなのか。これは、鈴子がこれから足を踏み入れる芸能の世界への足ががりなのだと考えるとわかりやすい。

関連記事