『大雪海のカイナ』『天国大魔境』など、ポストアポカリプス作品はなぜ求められる?

 『天国大魔境』原作者の石黒正数は、「滅び朽ちた日常風景の荒涼とした美しさや絶望感を描き出す手段としてはアニメが最も向いていると思っていました」とコメントしていた。(※2)これは『大雪海のカイナ』にも同じことが言え、二つの作品の物語上の共通点はみられないが、ポストアポカリプスをアニメ化する良さは共通していると考える。

 『大雪海のカイナ』は、巨大な蟲が生息しているところや、マスクが必要なところなど映画『風の谷のナウシカ』を彷彿とさせるシーンも多数みられる。原作者の弐瓶勉が影響を受けた作品だと語る『風の谷のナウシカ』は、冷戦の真っ只中に作られ、独ソ戦をモチーフにしている。また、この映画が放映された翌年に地球温暖化が発表されるなど、ポストアポカリプスの舞台設定は当事者意識を漠然と抱えてしまう。現代社会でも戦争や地球温暖化、自然災害、感染症など、文明が崩壊しうる要素はたくさん出揃っている。ずっと遠い未来、もしくはそう遠くない未来、起こりうるポストアポカリプスの世界観と、アニメ表現が掛け合わさることで、私たちはまるで“自分ごと”のように感じて、引き込まれてしまうのかもしれない。

参照

※1. https://www.bbc.com/future/article/20170815-why-video-games-are-obsessed-with-the-apocalypse#:~:text=Video%20games%20are%2C%20in%20a,are%20very%20good%20at%20violence.
※2. https://tdm-anime.com/news/detail.php?id=1103282
・宮崎駿『出発点』(1996年/徳間書店)
・CGWORLD特別編集版『アニメのCG現場2019』(2018年/株式会社ボーンデジタル)

■公開情報
『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』
10月13日(金)公開
キャスト:細谷佳正、高橋李依、村瀬歩、小西克幸、坂本真綾、杉田智和、堀内賢雄、大原さやか、熊谷健太郎、諸星すみれ、花江夏樹
原作:弐瓶勉(東亜重工)
監督:安藤裕章
シリーズ構成:村井さだゆき
脚本:村井さだゆき、山田哲弥
アニメーションキャラクターデザイン:福士亮平、小谷杏子
ビジュアルコンセプトデザイン:片塰満則
プロダクションデザイン:田中直哉、勅使河原一馬
CGスーパーバイザー:石橋拓馬
美術監督:久保季美子
3DBGマットペイントスーパーバイザー:松本吉勝
色彩設計:野地弘納
チーフレイアウト/アニメーションスーパーバイザー:井澤一勝
音響監督:土屋雅紀
主題歌:ヨルシカ「月光浴」
メインテーマ:澤野弘之
音楽:馬瀬みさき、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©︎弐瓶勉/大雪海のカイナ製作委員会
公式サイト:ooyukiumi.net
公式X(旧Twitter)@ooyukiumi_kaina

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