『パリピ孔明』視聴者をはっとさせる上白石萌歌の歌声 『ちむどんどん』とのギャップも

 現在放送中の『パリピ孔明』(フジテレビ系)は現代に転生した諸葛亮孔明(向井理)がアマチュアシンガーの英子(上白石萌歌)のマネージャーとなって音楽界に新しい風を吹かせるドラマ。のはずなのだが、ミヤ(菅原小春)やRYO(森崎ウィン)といったライバルたちはなんとか英子を蹴落とそうとし、孔明はそれに対し三国時代にも使った戦術を現代に適用させて対抗しようとするので、それぞれの思惑と戦略が渦巻くスリリングな「戦国ドラマ」のようになっている。その中で英子は、一筋の光のような、吹き抜ける爽やかな風のような、私たちをはっとさせる歌を響かせている。

 英子はライブハウス「BBラウンジ」でバイトをしながら歌手を目指すアマチュアシンガー。歌うことが心から大好きで、音楽と純粋に向き合う姿は人を惹きつけるものの、自信がなく、競争心が弱いために、なかなか才能を開花させられずにいた。ただ、一度やると決めたら怖気づくことなく、果敢に挑戦するところもある。

 第2話では、孔明がブッキングしたアートフェスで人気インディーズバンド「JET JACKET」のステージの真向かいで歌うことになった英子。たくさんのお客さんが「JET JACKET」の方で盛り上がり、自分はそれを見ながら、数人の前で歌えればいいほう……なんていう場面は容易に想像がつく。しかも、これは孔明の策略の一部だったわけだが、出演直前になって機材トラブルがあり、音が出ないと聞かされる。逆境すぎる。英子がここで全てを周りのせいにして出演を放棄したとしても、責める人はいないだろう。だが、英子は孔明に「音、出るようになった?」と確認し、歌えると分かると平然とステージへ向かっていった。緊張していないわけではない。実際、さっきまで平気な顔をしていたのに、歌う直前、ステージでマイクを握る手は震え、何度も深呼吸をしていた。なんとかステージを成功させようとしてくれている孔明には、きっと不安がる姿を見せたくなかったのだろう。そんな英子の心情が見え隠れする様子を上白石萌歌は丁寧に演じていた。

 上白石は、10歳の時に第7回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞。その後、俳優としてデビューし、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)やNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』に出演。さらにドラマや映画だけではなく、抜群の歌唱力を生かして、歌手活動も行い、ミュージカルでも活躍している。

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