草彅剛は“フィクションの説得力”を盤石にする 11年ぶり『世にも奇妙な物語』出演は期待大!

 彼の芝居は「泣かせてやる」といった視聴者の感情を誘導しようとする意図が希薄で、純粋にその役と一つになって、物語の世界に立っているように見える。

 だからこそ視聴者は逆に自分の方から彼に歩み寄り、主人公の気持ちと一体になれる。

 “僕シリーズ”に匹敵する草彅の代表作と言える、カンテレ・フジテレビ系にて放送された“戦争シリーズ”にも同じことが言えるだろう。“戦争シリーズ”は、借金で全てを失った男が金の力で復讐する『銭の戦争』、父親を殺した犯人に詐欺師になった男が復讐する『嘘の戦争』、自分を裏切った大臣に対して議員秘書が復讐する『罠の戦争』の3作が作られており、金、詐欺、権力といった悪の力に対して、同じ悪の力で復讐するダークヒーローを草彅は演じている。

 “戦争シリーズ”は、あらすじだけ抜き出すと露悪的すぎるため“僕シリーズ”とは逆の意味で苦手意識を抱く方も少なくないだろう。だが本作もまた、草彅の芝居があることによって露悪性が薄まっており、ギリギリのところで温かみのあるドラマとなっている。

 真逆の位置にある“僕シリーズ”と“戦争シリーズ”だが、草彅剛が果たしている役割はどちらも同じで、彼が主役として真ん中に立つことによって、説得力が保持されている。
  
 フィクションには人の感情を揺さぶる力があるが、「揺さぶってやる」という作為が少しでも見えると視聴者の気持ちは醒め、一気に離れてしまう。

 そういった演技と草彅の佇まいは真逆で、だからこそ視聴者は安心して作品世界に身を委ねることができるのだ。

 近年の草彅は、NHK大河ドラマ『青天を衝け』の徳川慶喜や、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の服部良一をモデルにした作曲家・羽鳥善一といった、物語の核となる脇役を演じる機会も増えている。おそらく、草彅剛が立っていることによって生まれる説得力を多くの作り手が求めているのだろう。

 草彅がいることによって、フィクションの説得力は盤石なものとなるのである。

■放送情報
土曜プレミアム『世にも奇妙な物語’23 秋の特別編』
フジテレビ系にて、11月11日(土) 21:00~23:10放送
ストーリーテラー:タモリ

『永遠のふたり』
出演:草彅剛、大西礼芳、姜暢雄、モロ師岡、江口洋介ほか
脚本・演出:星護
編成企画:渡辺恒也、長嶋大介、水戸祐介
プロデュース:中村亮太
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
©︎フジテレビ
公式サイト: https://www.fujitv.co.jp/kimyo/
公式X(旧Twitter): https://twitter.com/yonimo1990

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