池松壮亮×森田剛、念願の初共演を語り合う 2人にとって“夢を追い続けること”とは?
池松壮亮と森田剛。共に10代から活動し、日本の映画界にとってなくてはならない存在のふたりが、池松主演の映画『白鍵と黒鍵の間に』で初共演を果たした。
ジャズミュージシャン・南博の回想録を『素敵なダイナマイトスキャンダル』の冨永昌敬監督が、大胆な脚色のもと(共同脚本:高橋知由)映画化した。昭和末期の夜の銀座を舞台に、主人公の数年間を一夜に凝縮。ジャズピアニストを夢見る「博」とヤクザの会長もひいきするピアニストになった「南」の一人二役を池松が務め、主人公と出会う謎の男“あいつ”を森田が演じている。
「念願かなった」共演だったというふたりが対談。撮影エピソードや、夢を追い続ける主人公にちなみ、長いキャリアを持つふたりの考える「夢を追い続けること」を聞いた。
ユニークでチャレンジングな世界観にワクワク
――オリジナリティある世界観の作品でした。脚本からは、この空気をどう感じ取りましたか?
池松壮亮(以下、池松):チャレンジングで、大胆かつユニークな素晴らしい試みだと思いました。こうした構成や試みによって、何が浮かびあがるのか。この難しいチャレンジにおいて、冨永さんの脳内にあることと、自分が感じ取ってやりたいことを、あえて言葉にし合いながら共有していきました。冨永さんの発想力には驚かされるばかりでした。冨永さんにしか作れない映画を見事に作り上げてくれました。とても幸せなセッションでした。
森田剛(以下、森田):僕もワクワクしました。どうやってやるんだろうとすごく興味が沸きました。自分が理解している部分としていない部分の両方がありながら現場に入ったのですが、ゴールは監督の頭の中にあって、そこで自分の役がどう生きられるか考えました
――意外なことにおふたりは本作で初共演です。共演はいかがでしたか?
池松:とても濃密な時間でした。本作の主人公は、夢を追い続けている人ですが、森田さんが演じた“あいつ”という役だけは、最初から最後まで、「お前には音楽があるじゃないか」という主人公が見失いかける真実を一貫して語っています。ヤクザでありながら、この物語において誰よりも音楽を求めている人。音楽の力というものを誰よりも知っていると言えます。そして“あいつ”だけ、時空を超越しているんです。
――たしかにそうですね。
池松:10年間刑務所に入っていたはずなのに、博にも南にも会っています。主人公の人生を通り過ぎていった、あの頃の銀座でこんな人が博のそばにも南のそばにもいたであろうという“象徴”として描かれています。イメージ的な、ファンタジックでメタファー的なキャラクターでした。そんなつかみどころがない役を、あれだけ切実に、ピュアにそしてチャーミングに、儚くユーモラスに突くセンスというか、観ていてとてもゾクゾクするものがありました。浮遊しているような、それでいて一番地に足が着いているような、見事な塩梅で演じられていて、本当に素晴らしかったです。
――もともと共演してみたかったのでしょうか。
池松:ずっと気になっていました。出演されている作品を観るなかで、森田さんの凄みが近年さらに加速していると感じていたので、「今、森田さんってどんなことになっているんだろう」と、現場でこっそり見ていました。なんというか、演じるという上での真実を探求することに、一切躊躇しない方だなと感じました。