仲間由紀恵の一橋治済、福士蒼汰の再登場も 『大奥』Season2の見どころを原作読者が解説

『大奥』Season2見どころ解説

 そして、物語は幕府の人々が“江戸城無血開城”のために奔走する「幕末編」へと続いていく。おそらく、このパートで主人公的な役割を担うのが瀧山(古川雄大)だ。 男性や女性相手に春をひさぐ陰間を務めていたところを、老中の阿部正弘(瀧内公美)に見出され、大奥入りを果たす瀧山。家定(愛希れいか)・家茂(志田彩良)の2代で大奥総取締を務める彼が大奥で見るのは、それぞれに異なる夫婦のあり方だ。

写真はSeason1のお万の方(福士蒼汰)

 家定が薩摩の島津家から正室として迎えるのはのちの天璋院・胤篤(福士蒼汰)。“お万の方の再来”と呼ばれる彼を演じるのは、Season1でまさに“お万の方”こと有功役で登場した福士である。見た目は瓜二つだが、原作で胤篤は好色漢として描かれており、元々は公家出身の僧だった有功とは対照的。その演じ分けも気になるところだが、何よりの見どころはそんな胤篤と家定の夫婦愛だ。次期将軍を巡る継承問題を内部から操るために島津家から送り込まれた胤篤だったが、やがて不遇な人生を送ってきたにもかかわらず、聡明さを失わぬ家定を愛するようになる。時代の変化に翻弄されながらも、心から互いを必要とし、慈しみ合う二人を応援せざるを得ない気持ちになるはずだ。

 一方、家茂の正室となるのは皇族の和宮(岸井ゆきの)。公武合体政策のため、本来は孝明天皇の弟が家茂のもとに嫁ぐはずが本人が拒否したことで、その姉である和宮が身代わりとなり、男装して降嫁することに。つまり家茂と和宮は表向きは男性と女性だが、実質上、大奥始まって以来の女性同士の“夫婦”となるのだ。しかし、家茂は寛大な優しさで和宮を受け入れ、その頑なな心を溶かしていく。出自や立場、性別を問わず、心と心で結ばれる2組の夫婦のあり様は現代を生きる私たちに新たな価値観を提示してくれるだろう。

 原作の世界観を損なわず、かつ何層にも重なるテーマをより深める構成とキャストの名演が感動を呼び、放送批評懇談会が選ぶ「2023年3月度ギャラクシー賞月間賞」を受賞したSeason1。その続編となる今回のシーズンも、一瞬たりとも見逃せない展開となりそうだ。

■放送情報
ドラマ10『大奥』Season2
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送
出演:
【医療編】
鈴木杏(平賀源内)、玉置玲央(黒木)、村雨辰剛(青沼)、岡本圭人(伊兵衛)、中村蒼(徳川家斉)、蓮佛美沙子(御台・茂姫)、安達祐実(松平定信)、松下奈緒(田沼意次)、仲間由紀恵(一橋治済)
【幕末編】
古川雄大(瀧山)、愛希れいか(徳川家定)、瀧内公美(阿部正弘)、岸井ゆきの(和宮)、志田彩良(徳川家茂)、福士蒼汰(天璋院・胤篤)
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
音楽:KOHTA YAMAMOTO
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

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