『最高の教師』松岡茉優が作る“場”で全力をぶつけた生徒たち “託す”ラストに至るまで

 SNSが発達し、様々な年代の人たちが利用するようになった昨今。暴力的な言葉を使い続けていると運営側からアカウントの利用を制限させられる可能性があることから、「死ぬ」や「殺す」など対象となる言葉を伏字にすることがあるという。

 だから毎週土曜に放送されていた『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)のタイトルを見た時、すぐにその黒塗りになったところには「殺」の字が入るのだと直感した。1年かけて死に向かっていくのかと思いきや、教師である九条(松岡茉優)はすぐに突き落とされてしまい、2周目の“最後の1年”に突入。最終回を迎えて1週間になるが、いろいろ衝撃的なこの第1話は忘れることが出来ない。

 放送前は問題児が多く、暗く不穏な雰囲気が漂うクラスに、かわいらしい顔立ちの松岡が教師役としてマッチするのかが正直分からなかった。生徒になめられて威厳がなく、オドオドしているキャラクターとなることも予想できたからだ。だが、松岡は圧巻の演技力で何事にも揺るがず、時には冷徹にも見える九条を演じてみせた。本作には芦田愛菜や加藤清史郎といった“天才子役”として知られていたふたりだけではなく、山時聡真、窪塚愛流、當真あみ、茅島みずき、そして“真犯人”だった奥平大兼といった次世代を担うであろう若手俳優たちが多数出演。漠然とした不安や鬱屈した思いを抱えて、不安定になりがちな高校生をフレッシュさも見せつつ、それぞれに熱演した。松岡が演じる九条が基本的にいつも淡々としていたからこそ、生徒たちの全力でぶつかるような演技がより際立ったといえるのではないだろうか。

 その九条の“冷たさ”が学校だけのものだったのも印象的だった。2度目の1年間をやり直すこととなった九条は、1度目に離婚を迫られた夫・蓮(松下洸平)にふとしたことをきっかけに自分の置かれている状況を話すことにした。学校で起こっていることだけではなく、「自分がタイムリープしてきた」ということまでもだ。九条は信じてもらえないことは分かっていたようだが、本当のことを言うことで自分の中にある不安を少し軽くしたかったのだろう。

 ところが九条の予想に反して、蓮は信じているかはさておき、すべてを受け入れた。そこから九条は家では肩の力を抜くようになり、蓮とふたりで冗談を言い合って笑うような素のやり取りをするようになった。それが学校とは違う、九条の人間らしさを引き出し、彼女をより魅力的にしていた。生徒に向き合おうと時には、突拍子もないことをしたり、自分がこれから起こることを知っているかのように匂わせたりしていた九条。実はそれも、たくさん悩んで迷った上での行動だったということが、家での穏やかでありながら不安そうな九条の様子からも感じられた。

 九条を「孤高の人」として描かなかったことで、視聴者の中にも「できることなら九条に助かってほしい」と願った人がいたのではないだろうか。この思いが回を追うごとに本作の続きが気になってしまう要因の一つになったように感じる。

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