『らんまん』主人公と冒険に出るヒロインは私たち自身だ ムロツヨシが図鑑完成の助っ人に
丈之助が語ったように「演じる者と観る者、人間の間にしか存在しない幻」が演劇であるとして、その理は映像作品また劇中の登場人物にも当てはまる。現代の私たちはドラマという作品形式を通じて、そこに描かれたキャラクターの人生を目撃する。作品には高い志を掲げ、目標達成に向けて進む主人公と、その周りの人々が登場する。主人公が「演じる者」なら、主人公を取り巻く人々は「観る者」に位置づけられる。
フィクションとしてのドラマで交わされる言葉や演技は、それ自体が幻だが、主人公と同じ目線でその幻≒夢を共有し、劇中で実現するヒロインは、観ているだけの傍観者から、主体的な物語の担い手へと変わる。苦労の末に夢を実現したとき、幻はそこにあるかのような実在感で迫ってくる。『南総里見八犬伝』を読みふける少女だった寿恵子は、現実の世界で夫である万太郎とともに冒険に出ることで、自ら物語の主役となった。
『らんまん』が持つ物語の二重構造は、作品を観るこちら側に波及するものだ。人生は劇にたとえられるが、作中の人物と私たちを隔てる壁は、自ら主体的に生きることで容易に取り払われる。そこに金色の道が続いていることを『らんまん』は教えてくれた。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK