フジテレビドラマが第二の黄金期に? 『silent』に続き『いちばんすきな花』も期待大

 近年、目が離せないのがフジテレビドラマの動向である。

 80年代末のトレンディドラマブーム以降、フジテレビのドラマは高視聴率を獲得し、時代の最先端を独走していた。だが、2010年代に入ると過去の成功体験が足を引っ張るようになり、時代とのズレを感じる作品が増えていった。しかし、フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した新人脚本家・生方美久が執筆した2022年のオリジナルドラマ『silent』以降、フジテレビのドラマは再び勢いづいており、第二の黄金期が来るのではないかと期待が高まっている。

 その期待に応えようと、攻めの姿勢を見せているのが、「月9」(フジテレビ系月曜夜9時枠)だ。

 2010年代末から保守化が進んでいた月9だが、近年は『ミステリと言う勿れ』や『風間公親-教場0-』といった、これまでとは違うアプローチの作品が増えている。

 何よりその姿勢が感じられたのが、7月クールの恋愛ドラマ『真夏のシンデレラ』だ。月9ならではのキラキラした夏の恋愛ドラマを作りたいという企画と、経済格差やヤングケアラーといった社会問題を男女の恋愛を通して描こうとする市東さやかの作家性は必ずしも合致していたとは言い難かったが、生方美久と同じように、ヤングシナリオ大賞を受賞した新人脚本家を積極的に起用することで、かつての月9が持っていた若さを取り戻したいという意気込みは確かに感じられた。

〈ティザー公開!〉ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~ 10月9日(月)よる9時スタート!(初回30分拡大)

 10月クールの『ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜』も、クリスマスイブの1日に起きた出来事を1クールかけて描く他視点群像劇となっており、攻めの姿勢はしばらく続きそうだ。

 月曜22時に放送されているカンテレ(関西テレビ)ドラマ枠は、2021年に月曜に枠を移して以降、藤井道人監督の『アバランチ』や渡辺あや脚本、佐野亜裕美プロデュースの『エルピスー希望、あるいは災いー』といった作家性の強い作品を打ち出し、話題となった。同時に『罠の戦争』や『転職の魔王様』といった社会性の高い娯楽作が多数作られており、どれも安定したクオリティを保っている。また、夏クールから火ドラ★イレブン(火曜23時放送)という新しいカンテレ・ドラマ枠もスタート。第2作となった『ウソ婚』は『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)以降、ヒットしている契約結婚モノだが、各登場人物の心理に踏み込んだ、見応えのある作品に仕上がっていた。

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 一方、2022年に新設された水曜ドラマ枠(水曜22時放送)は、ヤンキードラマ『ナンバMG5』や自衛隊を舞台にした『テッパチ!』などを制作し、独自のカラーを打ち出そうとしている。少年誌や青年誌の男性向け漫画を多数映像化しているのが特徴で、次回作はコメディドラマ『パリピ孔明』。歌とダンスを得意とする俳優が多数出演しているため、ミュージカルテイストの楽しいドラマとなりそうだ。

 独自路線と言えば、東海テレビ制作の土ドラ(土曜夜23時40分放送)だろう。発達障害の妻と暮らす漫画家アシスタントの夫を主人公にした『僕の大好きな妻!』や、ある日、性別が変わってしまう「異性化」に翻弄される人々の姿を描いたドラマ『個人差あります』など独自のドラマを多数輩出している。中でも『テイオーの長い休日』は2時間サスペンスで人気を博したが今は仕事がないベテラン俳優を2サスで人気を博した船越英一郎が演じるコメディで、東海テレビにしか作れない作品に仕上がっていた。

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