泣かないナミ、惚けないサンジ 『ONE PIECE』実写化に配慮した小ネタ要素の改変

 もちろん何より、海外の資本で撮られた作品だというのは大きいのだろう。原作マンガはもともと、日本国内の読者をターゲットとしている。それも、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されているものとあって、最初は「少年」をメインの読者として想定していたはずだ。もしも作者である尾田栄一郎がいまの時代に新作を描き始めたとしたら、そこにナミやサンジのような極端なキャラクターはいるだろうか。何とも言えない。

 そしてこれが海外の製作現場において生身の人間の声と肉体を得たとき、マンガとはおよそ異なる、地に足のついたものとなった。作品全体の構成に手を入れたこともそうだが、この点も重要な改変ポイントではないだろうか。むろん、マンガに見られる“小ネタ”をすべて入れていたら、物語の持つドライブ感を損なってしまうという考えもあったはず。展開を鈍らせる要素を排するのは正解だと思う。マンガのファンであり、このドラマを楽しみにしていた方の中に、ああいった“小ネタ”こそを最大の楽しみにしていた人は少ないのではないだろうか(もちろんゼロとは言わないが……)。

 それから、原作のナミはよく泣く人物だ。このアクションに対し、サンジが過剰にリアクションをしたりもする。けれどもドラマのナミはあまり泣かない。最初から一貫して主体的で、誰かの助けを必要としてばかりの存在ではない。このあたりも実写化に際してキャラクターがアップデートされた点だろう。特定の人種にとらわれないキャスティングに関しては言わずもがな。「自由」を追及する者たちの物語を立ち上げるため、そこには「多様性」という言葉に簡単に回収されることのない、いまあるべき作り手たちの姿を作品から感じ取ることができるのだ。

■配信情報
Netflixシリーズ『ONE PIECE』
Netflixにて独占配信中
原作&エグゼクティブ・プロデューサー:尾田栄一郎
脚本&ショーランナー&エグゼクティブ・プロデューサー:マット・オーウェンズ、スティーブン・マエダ
キャスト:イニャキ・ゴドイ(モンキー・D・ルフィ)、新田真剣佑(ロロノア・ゾロ)、エミリー・ラッド(ナミ)、ジェイコブ・ロメロ・ギブソン(ウソップ)、タズ・スカイラー(サンジ)、ヴィンセント・リーガン(ガープ)、モーガン・デイヴィス(コビー)、 ジェフ・ウォード(バギー)、マッキンリー・ベルチャー三世(アーロン)、セレステ・ルーツ(カヤ)、エイダン・スコット(ヘルメッポ)、ラングレー・カークウッド(モーガン)、ピーター・ガジオット(シャンクス)、 マイケル・ドーマン(ゴールド・ロジャー)、イリア・アイソレリス・ポーリーノ(アルビダ)、スティーヴン・ウォード(ミホーク)、アレクサンダー・マニアティス(クラハドール)、クレイグ・フェアブラス(ゼフ)、チオマ・ウメアラ(ノジコ)
©尾田栄一郎/集英社

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