『らんまん』鉄道事業創始者の2人が揃い踏み 寿恵子の店は“第2のクサ長屋”に

『らんまん』寿恵子の店は第2のクサ長屋に

 万太郎(神木隆之介)が野山を歩いて植物を採集する姿勢にヒントを得て、五感を研ぎ澄ませながら、やぶ蚊が飛び交うその街を隈なく歩いて回った寿恵子(浜辺美波)。そうして好きになった渋谷の裏通りに、彼女は待合茶屋「やまもも」をオープンさせた。

 いわば、その場所は第2のクサ長屋だ。日が当たらずどんよりとしていて、ドクダミだらけのボロくてくさい長屋。だが、万太郎が現れてから、そこはいつしか人々が羽を休め、再び冒険へと向かう一つの“出発点”となっていった。きっと寿恵子の店も、渋谷という街を照らす街灯のような存在となるのだろう。

(左から)小林一三役・海宝直人、槙野寿恵子役・浜辺美波、フミ役・那須凜、相島圭一役・森岡龍

 『らんまん』(NHK総合)第24週が幕を開け、「人と人をつなぐ待合茶屋に」という寿恵子の夢が早くも叶う。

 万太郎の植物図鑑が完成間近となった頃、新橋の料亭「巳佐登」の常連客でもあった相島(森岡龍)が一人の青年を店に連れてくる。その青年は小林一三(海宝直人)という銀行員。なにやら彼と内密の話があるということで、相島は裏通りにある寿恵子の店を選んだのだった。

 鯵をごま油で焼いてなますにした“阿蘭陀なます”が食べたいというリクエストに応えてもらったことで、渋谷を気に入った小林は「土地が秘めた価値を見つけ、引き出すのは外から来る人間の方がいい」と語り始める。彼自身もまさに今、まだ未開拓の土地を人が集まる場所に生まれ変わらせようとしていた。多くの人が持て余している郊外の安い土地を手に入れ、住人が集まってきたところに鉄道を後から敷く。それが、鉄道事業に日本の明るい未来を見出す小林の構想だ。しかしながら、彼は関西に赴任が決まっているため、鉄道庁に勤める相島に渋谷の開拓を任せたかったのである。

『らんまん』“寿恵子”浜辺美波が夢を叶えるために向かう場所 渋谷の歴史と発展を振り返る

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 おそらく相島のモデルは東急グループの礎を築き、のちに阪急電鉄を創業する小林と並んで「西の小林・東の五島」と称された五島慶太だろう。小林からの「この渋谷にはあなたが降り立てばいい」という力強い一言に、手を震わせながら酒を飲み干す相島。ここ、やまももから彼らの冒険が始まった。

 そんな2人が食べていた“阿蘭陀なます”を作ったのは、居酒屋の店主である荒谷(芹澤興人)だ。板前時代に店を守るためとはいえ、暴れた客に包丁を向けてしまったことを後悔し、人様に料理を出すのを辞めてしまった荒谷。それから呑んだくれてばかりいた荒谷だったが、料理の腕は確かだと寿恵子は握り飯を食べたあの日から確信していた。寿恵子におだてられ、口では文句を言いながらもどこかまんざらでもなさそうな彼の姿は、万太郎に出会って希望を取り戻した倉木(大東駿介)や福治(池田鉄洋)を彷彿とさせる。ここに集まり、ここから始まる。寿恵子の店はそんな場所になりつつある。

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