実写版『ONE PIECE』で対比されるルフィとコビー 原作以上に“らしさ”を追求した演出も

 原作のファンで、配信された実写ドラマの全8話を通して観た人が意外に感じたことには、コビーの出番の多さもあるだろう。あるいはルフィの祖父のガープが最初から出て来て、船から大砲の弾を投げつけたり、アーロンパークでルフィと対峙したりすることも。

 アルビダの海賊船からルフィとともに逃げたコビーは、海軍に入り扉絵連載の「コビメッポ奮闘日記」やアニメの第68話「頑張れコビー!コビメッポ海軍奮闘記」 でヘルメッポとともにガープ中将の配下となって鍛錬を詰み、ウォーターセブン編で成長した姿となってルフィと再会する。ガープ中将のほうもそこで初めて登場するが、まだルフィの祖父とは分かっていない。

 これが実写ドラマシリーズでは、ルフィがモーガン大佐やバギー、アーロンといった相手と戦いながらゾロやナミ、ウソップ、そしてサンジといった仲間を得て、成長していくストーリーに重なるようにして、アルビダの海賊船で下働きをしていたコビーが勇気を得て、海軍に入って己の正義を貫く決心を固めるヒューマンストーリーが描かれていく。どこまでも自由を求めて突き進む海賊のルフィと、正義に目覚め善良でありたいと願う意識に目覚めたコビーを対峙させ、あなたならどちらの生き方を選ぶかと尋ねているようだ。

 ガープとの絡みもまた、ルフィが海賊になるという強い意思を抱き、家を飛び出し海に出てあちこち騒動を起こしながらイーストブルーを突き進んでいく姿を、海兵の中将として苦々しく思いつつ、身内として応援したいといった心理を見せて、ある意味で親離れ子離れの儀式を描こうとしたのかもしれない。

 第1シーズンの全8話は、コビーとは明確に道を違え、ガープにも決意の強さを示してグランドラインへと突入していく「麦わらの一味」の完成を描ききるものだった。だからこそ、実写ドラマの第8話で、ナミが戻り5人揃った「麦わらの一味」が樽に足を載せてそれぞれの思いを口にする「進水式」の儀式が執り行われる。原作やアニメではもう少し後の、ローグタウンを抜けていよいよグランドラインに入る場面で行われる儀式だが、前倒ししたことでほど良いグランドフィナーレ感が出た。

 ここで、サンジの足だけがまっすぐに伸びているところが、いかにもサンジといった雰囲気だが、実は原作ではサンジの足は膝が曲がっている。原作以上にキャラクターのそれらしさを見せようとした工夫もまた、実写ドラマシリーズ『ONE PIECE』をこれぞ『ONE PIECE』だと感じさせているのかもしれない。

■配信情報
Netflixシリーズ『ONE PIECE』
Netflixにて独占配信中
原作&エグゼクティブ・プロデューサー:尾田栄一郎
脚本&ショーランナー&エグゼクティブ・プロデューサー:マット・オーウェンズ、スティーブン・マエダ
キャスト:イニャキ・ゴドイ(モンキー・D・ルフィ)、新田真剣佑(ロロノア・ゾロ)、エミリー・ラッド(ナミ)、ジェイコブ・ロメロ・ギブソン(ウソップ)、タズ・スカイラー(サンジ)、ヴィンセント・リーガン(ガープ)、モーガン・デイヴィス(コビー)、 ジェフ・ウォード(バギー)、マッキンリー・ベルチャー三世(アーロン)、セレステ・ルーツ(カヤ)、エイダン・スコット(ヘルメッポ)、ラングレー・カークウッド(モーガン)、ピーター・ガジオット(シャンクス)、 マイケル・ドーマン(ゴールド・ロジャー)、イリア・アイソレリス・ポーリーノ(アルビダ)、スティーヴン・ウォード(ミホーク)、アレクサンダー・マニアティス(クラハドール)、クレイグ・フェアブラス(ゼフ)、チオマ・ウメアラ(ノジコ)
©尾田栄一郎/集英社

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