『どうする家康』杉野遥亮&板垣李光人が放つ勇将としての風格 気になる石川数正の言葉も

 井伊直政もまた、赤備えと恐れられた武田勢を率いて小牧・長久手の戦いに大きく貢献する。三河一向一揆で家康の命を狙った正信同様、直政もかつては家康を殺そうとしていた。「殿はなぜ、我々のような者を許し、信じてくださるのか……」という直政に、正信は普段通りの飄々とした様子で「憎んだり恨んだりするのが苦手なんじゃろ」と返した。けれど、そんな家康こそが戦なき世に必要だと直政は信じている。「戦なき世を作るのは、そういうお方だ」「ご恩に報いてみせる」と話す直政の表情からは家康を信じる芯の強さがうかがえた。

 それでいて、直政が池田勢を迎え討つ場面での爛々とした目には、「井伊の赤鬼」と称されるだけの血気盛んで命知らずな一面が感じられた。これまでの回で直政が人知れず鍛錬を重ね、旧武田勢をまとめあげたことが示唆されていることもあり、恐れられていた旧武田勢を率いる直政の勇姿はよりいっそう魅力的に映った。

 徳川四天王の堂々たる風格があらわとなった第32回だが、勝利をかみしめる家臣たちの中で石川数正(松重豊)だけが浮かない顔をしていた。「秀吉には勝てぬと存じまする」という数正の言葉に一抹の不安がよぎる。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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