『VIVANT』のスケールを支える巧妙な脚本 “家族”と“国家”を描く難題をどう打ち破る?

 海外ロケを駆使した壮大な映像と豪華キャストが話題の『VIVANT』だが、連続ドラマである以上、脚本が果たす役割はとても重要である。

 脚本家には『半沢直樹』などの作品で福澤と組んできた八津弘幸の他に、李正美、宮本勇人、山本奈奈の3人が名を連ねている。

 今のところ、八津が他の脚本家と組む二人体制で毎話の脚本はクレジットされているのだが、原作はチーフ演出の福澤克雄となっている。どういう役割分担で脚本が書かれているのかはわからないが、集団作業によって、かなり細部まで練り込まれた脚本になっていることが乃木の設定の見せ方からよくわかる。

 正直に告白すると第1〜第3話までは、作品のスケールがあまりに大きすぎるため、物語やキャラクターが大味になるのは、ある程度は仕方がないと割り切っていた。しかし、乃木の正体が判明する第4話末から人間ドラマとしての厚みが一気に増したと感じた。

 とはいえ、このまま親子の話に舵を切ってしまうと、テロ組織と国家の戦いという、これまで広げてきたドラマのスケールが一気に縮小してしまうのではないかと心配になる。

 このあたりは、本作が参考にしていると思われるSF映画『スター・ウォーズ』が宇宙規模の親子喧嘩とまとめられてしまうことにも通じる難題で、最終的に家族の話を選ぶのか、テロと国家の対決を選ぶかで作品の印象は大きく変わってしまう。二つの要素がバランスよくまとまるのが理想だが、落とし所の難しさも含めて、目が離せない展開である。

■放送情報
日曜劇場『VIVANT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、Nandin-Erdene Khongorzul、渡辺邦斗、古屋呂敏、内野謙太、富栄ドラム、林原めぐみ、櫻井海音、Martin Starr、Erkhembayar Ganbold、真凛、水谷果穂、井上順、林遣都、高梨臨、林泰文、吉原光夫、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司
原作・演出:福澤克雄
プロデューサー:飯田和孝
製作著作:TBS
©︎TBS

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