『最高の教師』當真あみ演じる“左利き”の東風谷が鍵に 俳優デビュー1年で圧巻の表現力
松岡茉優主演の日本テレビ系ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』で、クラスの優等生・東風谷葵役を演じている當真あみ。前回、もう1人の主人公と言える芦田愛菜演じる鵜久森に告白するという衝撃の展開を迎え、今後の物語の鍵を握る人物として俄然注目が高まっている。そこで、今作での當真の魅力に触れつつ、ドラマの今後の展開を考えてみたい。
當真は圧倒的な透明感と目をひくビジュアルで、ドラマデビューからわずか1年とは思えないほど、数々の作品で存在感を見せている。芦田のように子役からキャリアを積んだのではなく、2020年に沖縄でスカウトされ、2022年1月に『妻、小学生になる。』(TBS系)でドラマ初出演。中学生の天才小説家だが実は高校教師が憑依していた人物を演じた。続く『オールドルーキー』(TBS系)では、無名だがスター性のあるフェンシング選手役という、當真が俳優としての現在地と重なる役を演じ、アスリートが持つピュアさを、言葉ではなく心からの感情が伝わる演技を見せた。
そしてドラマデビューからわずか1年で、NHK大河ドラマ『どうする家康』にて、主演の松本潤演じる徳川家康の長女・亀姫という重要な役に抜擢。これまでのナイーブなキャラとは真逆の、天真爛漫で明るく、そして勝ち気な姫を演じ、演技の幅を見せている。さらにアニメ映画『かがみの孤城』では主人公・こころ役で声優にも挑戦。澄んだ声の中に強い意志を感じるしっかりとした喋りで、共演の芦田とも対等に渡りあっていた。當真は、目の雰囲気だけで役を使い分け、表情や仕草、そして声までも役柄とシンクロするのが上手い俳優なのだ。
當真あみ、『どうする家康』松本潤&有村架純から学んだ役への姿勢 「追求心を見習って」
第21回までの放送を終えたNHK大河ドラマ『どうする家康』。毎週魅力的な人物が登場している中、第17回から物語に“癒やし”を与え…
今回の『最高の教師』は、生徒30人が容疑者というミステリー要素が強いドラマだ。だからこそ当初の生徒たちは、何を考えているのか分からない冷めた眼差しと不気味さが演出されていたが、そこから学校生活に真剣に向き合い、命が吹き込まれるように、生徒たちが変わっていく様子が見どころであり、役者の見せ場でもある。そんな中で、心の変化を静かに見せていくナイーブな役柄は當真の得意とするところで、実際に複雑な感情を見事に表現している。
當真演じる東風谷葵は、九条(松岡茉優)が「なんでもします」と宣言した後、いの一番に九条の元に訪れた生徒。「この内申、整理してください。私は通院で授業を休んでいただけで、テストの点は取りました。なのに掃き溜めクラスなのは納得できません」と無理難題を要請した。複雑な理由があるにせよクラスを嫌悪する余裕のない子だが、相楽琉偉(加藤清史郎)をリーダー格とする問題児集団に関わりたくないと考えるのも普通のこと。
ただ物語が進むにつれ、優等生だからと利用されていた問題児集団に対して正面から協力しないと断ったり、鵜久森の意見を堂々と後押ししていくなど、徐々に意識が変わっていく様子がみられた。心変わりする多くの生徒は九条の働きかけによるものだが、東風谷はクラスメイトの鵜久森がクラスを変えようとする思いに促されて変わっていく。ただそれは、鵜久森に特別な感情を抱いているからこそ。第5話の最後には、東風谷は鵜久森に「もしかしたら好きかもしれない」という告白もしている。そしてこの告白で、大好きだった鵜久森が死んだのは九条がイジメを無視したことだと恨み続け、それで突き落としたという「東風谷真犯人説」が濃厚になった。九条が最後に見たのは左腕だが、東風谷も左利きだ。