『らんまん』神木隆之介の呆然とした表情が万太郎の“失敗”を物語る 決壊した田邊の心

『らんまん』決壊した田邊(要潤)の心

 今週……いや、振り返れば第8週「シロツメクサ」から遠くで轟いていた雷鳴が、ついに万太郎(神木隆之介)に落雷した。第17週「ムジナモ」第85話で、田邊(要潤)が万太郎に東京大学植物学教室への出入りを禁じたのだ。

 田邊のセリフには「我が東京大学植物学教室」とあり、万太郎が外の人間であることが強調されている。呆気に取られ、何が起こったのか理解が追いついていない万太郎の顔を抜き、第17週は幕を閉じていく。

 なぜ、田邊は万太郎を破門にしたのか。確かに植物学雑誌の表紙に田邊の名前がなかったのは失礼に値する。大窪(今野浩喜)の手のひら返しはあまりにも可哀想ではあるが、万太郎が見つけたムジナモが「アルドロヴァンダ・ヴェシクローサ」であると突き止めたのは田邊である。教授と共著の形にしなければならなかった。

 ただ、それは表向きの理由であり、田邊には先述した約10週分にも及ぶ積み重ねられてきた万太郎への嫉妬心がある。田邊は東京大学植物学教室の教授であり、さらにはお茶の水の高等女学校校長に就任。世間的な地位としては、言ってしまえば小学校を卒業していない万太郎とは雲泥の差だろう。しかし、誰もが万太郎を「本物」だと認めている。植物学教室の面々、ロシアのマキシモヴィッチ博士さえも万太郎に夢中だ。そして、万太郎の実力を誰よりも認めていたのは田邊だったのではないだろうか。

 だからこそ、その実力を奪い自分のものとして利用しようとした。だが、万太郎に拒絶された田邊は、その新しい芽(と呼ぶにはすでに脚光を浴びているが)を摘むことにした。密談をしに田邊邸宅にやってきた森有礼(橋本さとし)は、「自分こそが日本を目覚めさせる天下第一の学者になる」と野心を燃やしていた頃の田邊の昔話をしているが、その望みは花を咲かせなかった。トガクシソウのように。

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