『らんまん』は“推し”がある人ほど共感する物語に 夢中になることの尊さと難しさ

 竹雄(志尊淳)が給仕として働いていたレストランでのシーンでも、ウエイトレスである竹雄をアイドルかのように応援する女性たちが出てきていた。また、万太郎がお世話になる大畑印刷所の一人娘・佳代(田村芽実)は、寿恵子を“推し”として崇めるなど、明らかに現代の推し文化が内包された作品になっている。

 『らんまん』は“ヲタク”でいること、“推し”を持つことを肯定的に捉えている作品だと分かる。そして、それゆえの苦しさも描いているところも、『らんまん』の素晴らしいところである。万太郎のように“ヲタク”のままではい続けられない人々は現実でも存在する。そのような人々を『らんまん』は丁寧に描いているからこそ、物語を多面的に映し出すことが出来ているのだ。

 『らんまん』が多くの視聴者に受け入れられているのも、現代社会に生きる人々のリアルを尊重し、汲み取り、作品に取り入れているからだろう。だからこそ、年齢に問わず魅了される作品になっているように思う。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

関連記事