『ミッション:インポッシブル』最新作、北米1位 ストライキでハリウッドは未曾有の事態に

 7月14日、ハリウッドの俳優たちが所属する全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)がストライキに突入した。全米脚本家組合(WGA)も5月からストを続けており、俳優・脚本家の両方がストを行うのは1960年以来63年ぶり。ハリウッドの映画・テレビはほとんど製作中断を余儀なくされ、映画の顔であるスター俳優たちはプロモーションに一切参加できなくなった。

 トム・クルーズ主演『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は、世界を股にかけた大型プロモーションツアーの最中であり、クルーズをはじめとする出演者とクリストファー・マッカリー監督は、ローマやロンドン、アブダビ、ソウル、シドニー、ニューヨークを巡っていた。7月17日~18日には最終地の日本を訪れる計画だったが、これはストの影響でキャンセルとなった。

Oppenheimer | New Trailer

 また、7月21日に北米公開となるクリストファー・ノーラン最新作『Oppenheimer(原題)』は、SAG-AFTRAのスト開始直前にイギリスでのプレミアイベントを開始。出演者のキリアン・マーフィーやエミリー・ブラント、マット・デイモンらはレッドカーペットには登場したが、上映前には会場を離れ、スクリーンの前にはノーラン監督ひとりが立つことになった。

 新型コロナウイルス禍による苦境から回復しようという今、ハリウッドは再び大きな停滞期に入っている。俳優・脚本家ともに、最大の争点は、皮肉にもコロナ禍の映画界を支えたストリーミングサービスの台頭による報酬(二次使用料)の低下。それにしても気の毒なのは、製作中断を受けて短くとも2024年いっぱいは続くであろう公開スケジュールの混乱も含め、再び大きな打撃を受ける映画館業界だ。

『バービー』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

 すなわち、今週からのハリウッドは未曾有の事態にあると言ってよい。冒頭に触れた通り、俳優・脚本家の同時ストは63年前にもあったものの、その当時とは映画界の状況がまるで異なるためだ。ストが続くかぎり、SNSでのプロモーション活動にさえ制限がある以上、興行自体にも変化が生じることは想像に難くない。まもなく7月21日に北米公開となる『Oppenheimer』と『バービー』から、早くもその影響が出る可能性もある。

 いささか前置きが長くなったが、7月14日~16日の北米週末興行収入ランキングは、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』が初登場No.1。公開日の7月12日から5日間では8000万ドルを稼ぎ出し、第2作『M:I-2』(2000年)の7850万ドルを超えてシリーズの歴代記録を更新した。

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』©2023 PARAMOUNT PICTURES.

 もっとも、事前の期待をやや下回るスタートだったことは事実だ。週末3日間では5620万ドルと、前作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018年)の6123万ドルを上回ることはできなかったのである。また、5日間の興収成績も当初は9000万ドル以上が見込まれていたのだ。トム・クルーズでさえ、『トップガン マーヴェリック』(2022年)のロケットスタートを再現することは難しいのである。

 3日間で約6000万ドル、5日間で約8000万ドルという初動成績は、今週公開3週目を迎えた『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』とほぼ同じだ。製作費におよそ3億ドルもの巨額が投じられているのも同じで、つまりはかなり厳しい滑り出しということである。

 しかしながら、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』には追い風が吹いている。海外市場で驚くべき強さを発揮するのが本シリーズの、ひいてはトム・クルーズの強みであり、本作は早くも海外興収1億5500万ドルを記録。ハリウッド映画が昨今敬遠される中国市場では苦戦を強いられたが、世界累計のオープニング興収はシリーズ史上最高の2億3500万ドルとなった。

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』©2023 PARAMOUNT PICTURES.

 また、本作は批評家・観客ともに圧倒的な支持を受けているのもポイント。Rotten Tomatoesでは批評家スコア96%・観客スコア94%の高水準となり、観客の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A」評価を獲得した。

 そもそもシリーズの傾向的に、『ミッション:インポッシブル』シリーズは初動成績こそ低めでも最終的には大記録を打ち立てることが多いほか、北米興収より海外興収が伸びやすいのである。本作も世界を見据えた興行と口コミ効果で、今後もさらに数字を伸ばしていくことが大いに考えられる。

 なお、トム・クルーズ作品にとって日本は一大市場と言ってよく、本作も例外ではない。日本公開は北米から1週遅れての7月21日だが、ストによる来日キャンセルは宣伝サイドにとって小さからぬ痛手だろう。興行に大きな影響が出ないことを祈るばかりだ。

関連記事